Prisoner of Azkaban-13



夜更けのグリフィンドール寮。ベッドでお菓子をつまみながら、ロンの寝言にも答えつつハリーは地図に目を落とす。アーガス・フィルチの名前と足跡から逃れるように、名前の足跡がひゅーっと逃げていくのを、さすがだと笑って、別の塔の地図のほうを捲る。

"ピーター・ペティグリュー"

ハリーの手が思わず止まる。日中店で聞いた、シリウスブラックに粉々にされたはずの彼の名前が地図に示され彷徨っている。ハリーはもちろん、ベッドを抜け出した。

絵画にルーモスの強い光を叱られつつ、鉢合わせたのはペティグリューでなく、スネイプ。

「(名前になんて言えば……)」

スネイプから助けるように現れたルーピンの後を歩きながら、ハリーは地図を没収されたことを反省する気持ちと、地図無しでも夜に抜け出すのだから名前は大丈夫だという気持ちの半々だった。


3C教室。ルーピンの声が優しかったのは"お入り"という言葉までだった。

「どうしてこの地図が君の手に渡ったのだ?しかも学校側に提出しなかったとは驚きだ。
ブラックの手に落ちたら君の居場所が一目瞭然」

「あなたを狙っているのが誰なのか今分からないし、その向こうに『あの人』も関係してる可能性は十分あるってこと。
これが、その誰かの手に渡る可能性も。絶対に気を付けてね」

「……はい」

ルーピンの言葉に名前の強く握る手と、真剣な表情を思い返す。ハリーの自身を危険にさらす行動に、両親を深く知るルーピンは声に自然と熱がこもる。彼から見ても十分、ハリーは反省しているようだったので、もう庇えないよと伝え、寮へ戻るよう指示をした。

「……先生
その地図…正しいとは限らないようです。死んだはずの人がさっき地図に出ました」

ルーピンは、ドアの近くで足を止めたハリーを振り返る。

「誰かね?」
「…ピーター・ペティグリュー」
「…あり得ないことだ」
「でも見たんです。 …おやすみなさい」

教室を去るハリーの言葉にルーピン絶句ししばらく動けずにいた。
日中にここで会ったあの子なら、動揺を見透かされただろうかと思い返された名前に、彼を気に掛けてやるといいと言ったのは果たして正しかったか。ルーピンは困惑した表情を、手元の地図に向けた。


…――

「心は老婆ですって」
「占いの鉄則は"いいことだけ信じる"だから、気にすることないよ」

腹を立てて占い学を抜け出したハーマイオニーは名前と道すがら合流した。水晶を払い落としてやったと言うので少し驚いたが、今は彼女の全面的味方で居なくてはと"最高ね"とだけ返した。怒りがまだ冷めきらない様子だがところで、とハーマイオニーは名前に改まる。

「そういう名前も授業を抜け出して?」
「あー、  …そんなとこ」
「気が合うわね」

フレッドジョージから頼まれた老け薬の調べ物が解決目前で、名前が好奇心を解放して突き進むには、ホグズミードの時間だけでは足りなくなってきた。大広間で自習となり、プラス生徒の自習中はきまって読書に没頭する先生の監督下となれば、名前は寮友と口裏を合わせ抜け出すほかなかった。
誤魔化すような笑顔を見せつつハーマイオニーとわかれると、名前は真っ直ぐあの小さな塔を目指した。外が見えると、思わず藪の影に黒い大きな犬が隠れていないか、思わず探す。

「(グリを忍びの地図で探したら、なんて出るんだろ)」

忍びの地図はハリーが持っているとしか思ってない名前は、"Gris"と書かれた、靴でなく彼の足跡が地図を駆け回るのなんかを階段の途中に考え、頬を緩ませた。

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