Prisoner of Azkaban-9



「箒から落ちて地面に激突…―
「うっ、そでしょう!!?」
「しーっ!ごめん、嘘…」

「ディメンターを見たときのあの混乱ったらね…」
「何?」

悪ふざけのつもりが大いに裏目に出て名前が本気で心配したので、さらにバツの悪そうな顔になったフレッド。ああもうというように胸を撫でおろしてさっさと視線を顔色の悪いハリーに変え、名前は心配そうに表情を歪めた。いつもは人づての嘘すら見抜くくせに、と皆が名前の取り乱しように驚いたが、仕切りなおすように話したハーマイオニーに名前が聞き返した。

「ディメンターよ。名前も見てたでしょ?」

そういえばいつもハイタッチしなかったわね、とハーマイオニーがフレッドとジョージのほうも見た。「あぁ…今年はな」「こいつが恥ずかしがって…あ」とまた二人で嘘を合わせつつフレッドが再び悪ふざけをしかけたとたん、名前は医務室を後にした。
嘘だろ…逃げ出しちゃうほどにか?とロンは自分だけ嘘に引っかかり、まだ少し怖い名前のことを呆然と見送った後、ハリーの顔色に気付く。すかさず二人はクィディッチに名前が居なかったことから皆を気を逸らそうと、フレッドから順につっかかり尽くす。

「…顔が少し青くない?」
「青い?」
「当然だろ」
「空から墜落だ」
「ロン、天文台の塔に登れよ」
「名前も居るかもな」
「あぁ、いつもあそこだ」
「また名前にビビるぞ、お前は」

「…きっと景色もよく見える」

そう答えて笑うハリーに、皆も安堵して笑顔を返す。心配するハーマイオニーに大丈夫、と返して上体を起こした。入り浸るのは天文台のものとは別の"塔違い"で、ロンを怯えさせる材料だった。
それからハリーに話された、ディメンターの校内侵入のことや自身が箒から落ちたこと。自身のことより、試合結果のほうが彼に堪えた様子だった。気まずそうにロンも話に入る。

「ついさっき行っちゃったけど名前も心配してたよ。それから…もう1つ言うことがある」

布に包んで抱えていた中身は、大破したハリーの箒だったので、心配そうな、気遣うような皆の視線の中、ハリーは言葉を失った。


名前はというと、忙しなく医務室を飛び出したが何処へ向かうか、そのときの話を誰かに聞くのが先か、ハリー本人に聞くほうが賢明か、引き返そうとした足を止めたりむしゃくしゃした様子で、急に入り込んだ情報に混乱していた。
状況的に有り得たのかもしれないが、偶然ディメンターがハリーだけを襲った?また?
ハリーの何がそんなにディメンターを引き付けるのか、守る手段はないのか、しばらく佇むと、
"生き残った男の子"の当時のあの新聞を広げて考えるべく、方向を変えてあの塔を目指した。

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