Prisoner of Azkaban-8



雷雨の音の響き渡る城の通路、名前と先日の大きな黒い犬が向かい合って地べたに座るさまは、皆ピッチでクィディッチに歓声を上げ盛り上がっている今でしかあり得ない光景だろう。名前がジョージに言われたとおり早めに切り上げそこを通りかかると、またあの犬が舌を出して、陰からこちらを見ていた。名前は笑顔を見せその場に座り、そっちは濡れるだろうとか、今日は誰も居ないよ、というと、健気にこちらに歩み寄り、向かい合うように座って名前を見つめた。
ハッハと息を吐いているか垂らした舌をペロッと鼻にやるかだけだが、名前はこっちに来てくれて嬉しく心を開く。

「よく来るみたいだけど誰かの家族なの?会えるといいね…」
「……」
「君のことなんて呼ぼうかな。私たちもう顔見知りだから、呼び名は必要でしょ」
「……」
「私は名前。そうだなぁ…」

名前は一年生の頃に彼らに初協力した、あの地図を思い浮かべる。これまで何度も出入りした閲覧禁止の棚だが、向かう日は日中に彼らに申請し、借りてきてから自分の寮で夜を待つ。三人にとって使わないと行けない場所が校内外いたるところに有るので、この地図はずっと役立ち続けている。

(では誓いますか?)
「… ムーニー」
「バフッ」
「あはは!嫌だ?」

間髪入れず、少し牙を見せるようにして返事をした彼に名前は笑った。それじゃあ、と行きついた呼び名はグレーの"グリ"。
彼は今度は、というか急に始まった、彼女による命名式についていけないだけなのだが、否定をしない。

『ブラック』は今は。ほら。…"嫌でしょ?"とこの大きな黒犬に少し人差し指を向けてアイコンタクトのような仕草を寄越すのを、クィディッチで出払った生徒たちは見たらきっと小声で顔を寄せ怪しみだすだろう。

「なんで絵をあんなに傷付けたの?」
「  ……」
「今グリが近くに居て分かったよ、私鼻がいいからね。まぁグリほどじゃないけどね……あ、」

ふと、立ち上がり黒犬は雷雨の中へ駆けて行ってしまった。グリ!自慢したつもりじゃないよ!とそっちへ叫んでいると、しばらく経って生徒達が戻ってきた。しまった、とさっそく平然を装いつつその場を去ったが、選手たちは医務室だと小耳に挟んで、名前は表情を曇らせ医務室へ走った。ハッフルパフの勝ちだったようですれ違う顔見知りからはおめでとうと、幾度となく声を掛けられたが、名前は今、親友の二人が無事かどうかでいっぱいいっぱいだった。


「「「名前!やったよ!」」」
名前が医務室に入れば一番奥のほうから喜びの声がセドリックや選手たちから声が掛かったので、笑顔を向ける。グリフィンドールの皆のほうを見れば、ベッドを囲むメンバーの中に居たバツの悪そうな二人と目が遭ったので、そちらへ歩み寄ると、横たわっていたのはハリーだった。

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