Prisoner of Azkaban-7



時期が訪れると一気に葉を落とす暴れ柳は見ものなので、名前は次の授業に行く前に、そろそろかと一人城の外を駆ける。
来てみるとまだ葉を付けていたので、しばらく眺めているとふと、岩陰に気付き目をやる。少し足の長い、真っ黒な犬がハッハと舌を出して、こちらを見ていた。柳の気に障らない程度距離を置いていた名前の場所から、それはちょうどよく見えた。

「こんにちは!きみ迷子?」

その犬はしばらく名前を見たが、くるっと振り返り駆けていってしまった。名前は何も気にせずその後ろ姿を見送り、気を取り直して柳に目を向けた瞬間、バサ!と大雨のように、一気に葉が地面に落ちたので目を丸くする。ぶるっと震え落ちた葉を舞い上がらせる柳が可愛く思え、漂う枯葉の中、名前は笑ってしまった。


フレッドとジョージが小さな塔に足を踏み入れ名前の姿を捉える寸前、彼女の鳴らした指によって放たれた魔法が二人の顔の高さの壁を音を立てて欠けさせたので慌ててしゃがんで避けた。
何するんだとか怪我はないかとかを言うより三人は、名前の指から放つ威力が格段に増していることに丸くした目を合わせ、一息おいてフレッドジョージが「やるなぁ名前!」と心から喜んだ。

…――

「クィディッチ見に行かないって言ったら怒る?」
「「怒るね」」

定位置の三人。想像はしていた、もう怒ってる様子で答える二人に名前は気まずそうに視線を逸らす。大好きなセドリックも見れるのにか?と不満げなままフレッドが茶化すので被せて否定すると、ジョージが理由を問う。

「みんな観戦に行くから、学校のひと気が減るでしょ。もうちょっとでこれが分かりそうだから」
「!…」

見せたのは、折っては広げを繰り返したので早くも擦り切れかけている、フレッドによる老け薬のメモ。思わずフレッドの表情に少しだけ感激の色が見せるが、名前、とジョージが切り出した。
好奇心旺盛は三人共同じ、そのうち止めなければ危険すれすれまで足を踏み入れるのは名前、止める二人のうち、彼女への心配の色が強いのはフレッド、冷静で現実的なのはジョージだった。

「ひと気がないのを狙うそれ、みんながホグズミードへ行ってるときもしてるだろ」
「……」
「俺たちのためなのはそりゃ有難いけど、なるべく早く切り上げて、ピッチに来いよ。俺たちだって名前に見てほしいんだから」

図書館で本読んでるシリウスブラックに鉢合わされちゃひとたまりもないよ!
声を上擦らされて、少しおどけで雰囲気を和らげるのもジョージらしい。確かにというような顔でフレッドが名前に目を向ける。フレッドとジョージは切り裂かれた絵画を見たあの日の、ダンブルドアが見せた、名前を制するようなあの表情を、忘れられずにいた。

「そうだね。 …」

二人によく頷いて見せて、名前は手元の、フレッドの箇条書きと、余白に何度も書き足した自分の字に目を落とした。


雷の鳴る大雨のクィディッチ。ゴーグルで流れる雨の隙間から見たハッフルパフ席では、名前の姿は見つけられなかった。

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