Prisoner of Azkaban-6



「これ…」
「寮に入れないな…」

呟いた名前を見下ろしたフレッドが続けてジョージが絵を見たまま呟く間、"ココ"と自分の口元を指差し、その手で名前の口に付いてたクッキーの欠片をスッと取ったので、咄嗟のことに照れ、名前は彼を見上げていた目のやり場に困り慌てた。

「わ、私は寮に戻るから」
「おい!階段ないよ」
「! ……」

踵を返そうとすると気まぐれな階段はもう動いており三人のすぐ後ろに道はなかった。名前の腕を掴んだフレッドに名前もまた息を呑んで咄嗟に掴まったので、変な名前、と分からないように笑い合う二人の間で、気まずそうに元の通り絵のほうを向く。
だんだんと集まる人が増え、絵の無残な様にどよめき、周囲の絵画も怯えるようにそれを見ている。しばらくすると三人の背後に移動した階段で、ハリーやロンがやって来た。振り返りお帰りと名前が呟く声は、ジニーの「"太ったレディー"が…」と説明する声にかき消される。パーシーが下がれと言っているのに、誰もみな無視して困惑し続けている。
ハリーらの後ろからダンブルドアとフィルチが上がってきたので、皆両脇にどき道を開ける。彼らの表情に一層、周囲の緊張感も増す。

「ミスター・フィルチ。ゴースト達を集め、城の絵をすべて調べレディーを捜すのじゃ」
「ゴーストを呼ばなくても……あそこに居ます」

フィルチの指差した先を皆が目で追い、グリフィンドール生は皆一気にそちらへ駆ける。どこへ行く!走るな!というパーシーの声は、またも無視。
名前が別に走らずにいた間、ハリーもハーマイオニーも追い越していった。フレッドジョージはもっと先の、先頭あたりをもうとっくに駆けている。
名前は向きを変え背後にかかる絵画のひとつ、皆が集まりなおしたほうを見上げた。つとめて優しく、ダンブルドアが絵に問い掛けると、フレッドの目の前、絵画のカバの向こうに、怯えて泣き震えるレディーの姿が見える。

「レディー。誰がこんなことを?」
「悪魔のような目でしたわ…!名前通りの真っ黒な魂…噂になってるあいつです」

この城にいるんです!シリウス・ブラックが!
レディーの叫ぶ声に周囲のどよめきが増すのを後目に、名前は破れた絵に近づきじっくりと見て、少し手を触れた。

「警備を固めるのじゃ。君たちは大広間へ。……名前!」
「!!  ……」

𠮟りつけるようなダンブルドアの声に名前は急いで絵から手を遠ざけ、悪さがバレた子供のような顔で振り返った。混乱のさなかなので薬草学のときのような恥はかかなかったが、ゆっくり名前を振り返り首を振って見せるダンブルドアと向こうに佇む名前を、ハリー達やフレッドジョージは交互に見た。

その夜、生徒達は大広間で寝ることに。真夜中、ポッターに忠告は?というスネイプの声は、なかなか寝付けなかった名前の耳まで確かに届いた。

prev | top | next















×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -