Prisoner of Azkaban-3
薬草学の授業中、手元を見下ろす大勢の生徒の中、一人だけ背伸びするように温室の屋根の窓からしきりに外を見る名前はすぐにスプラウトの目を引いた。
「さぁみんな、実の色の変化をよーく見て!一瞬ですからね。彼らの放つサインを見逃さなければ…成功です。ハウスの外に好きな人でも居るの名前?」
「!」
寮を問わない大勢が、言われた通り実のほうに向けていた視線をいっせいに後方の名前へ向ける。たじろぐ名前が面白くて"誰なのよ〜?"などと言って吹き出す寮友たちや周囲の同級生と、名前どうしちまったんだ?と顔を合わせて小ばかにするように笑うフレッドジョージも。目を盗むようなことの周到さといえば名前であるというのにこういったことは珍しかったので、スプラウトも少し溜息をついて見せるだけで説教はなされなかった。
…――
「やっぱりヒッポグリフだったの!?さっき飛んでた背中に乗ってたって?信じられない!」
「バックビークっていうんだ。ハグリッドに頼めばきっと見せてくれるよ」
「…やっぱり、最初にお辞儀をした?」
「したよ」
「すっごい!!」
大広間。思い思いの時間を過ごす皆の輪に名前も居た。ハグリッドの三年生の初授業で、ヒッポグリフを見られたと聞いて名前はハリーの隣を陣取った。表情を輝かせる名前を笑うハリー、その隣のハーマイオニーも笑って聞いている。さらに奥のほうで"見てたのは好きな奴じゃなかったか""みんなの前で恥かいてたな"と話すフレッドとジョージの声は、興奮する今の名前には届かなかった。
「綺麗だったなぁ…はじめは一瞬、でぃ…」
ディメンターかと思ったんだ。と続ける前に名前は黙ったので、ハリーは見つめたままハテナを返す。このまま話してしまおうかと、ハリー、と口にした瞬間、シェーマスの大きな声と重なった。
「目撃されたぞ!」 「!」
駆け込み、テーブルの中央にたたきつけた新聞に皆集まる。急いで席を立ちそちらへ駆け寄ったハリーに名前も続く。ダフタウンでの目撃情報に、ネビルがひときわ不安がるのを、皆がさらに引き立てる。
「ディメンターの見張りを抜けて脱獄したんだぞ」
「そう どこにだって現れる」
「……ハリー、シリウスブラックのことで何か言われたりした?」
皆と同じように新聞に目を向けたまま聞く、隣の名前と新聞を交互に見つつハリーは応える。
「僕を殺そうとしているから近付くなって」
「殺そうと? …なぜ?」
「……奴が力を取り戻すため」
「…」
漏れ鍋でアーサーに忠告されたことを、ハリーはつとめて平然を装い名前に話した。汽車で被害に遭ったハリーが、指名手配犯にまでまさか関係はないだろうなと聞いてみると返って来た返答に、名前は考え込み、取り押さえられながら叫ぶシリウスブラックの写真を再び見下ろした。