Prisoner of Azkaban-2



次第に天候は悪化し汽車の窓に雨が打ちつけだした。走る速度にそって雫が窓を無数に走る。突如、ギーと耳に痛いブレーキ音とともに激しく揺れ、汽車は止まった。三人それぞれに持っていた本やらお菓子の包みやらを、慌てて握りしめたり、落としたりして、驚いた顔を合わせた。
ほかの席の扉が開けられる音や、戸惑う声が耳に入る。咄嗟に椅子に掴まるようにしたままフレッドがふざければジョージも応える。

「休憩かな?」
「次は〜…"崖っぷち駅"?」
「「「わっっ!!?」」」

突き上げるような大きな揺れに三人今度は上げる声を揃えた。揺れの影響のようにフッと社内の灯りが消え次第に不安が心をよぎる。窓際に居た名前は視界の隅に見えた影に、窓をバッと振り向くが、変わりなく大雨の景色だった。が、それも次第にピシピシと音を立て、ゆっくりと凍っていってしまった。
もう一度、さらにもう一度、こちらを脅すように汽車が激しく揺れ、各席の扉が煩く鳴る。今度は二人もふざけたりはせず、徐々に不気味な空気に飲まれ始めた。
一気に冷えだした外気に名前が身を擦り息を吐くと白くなった。手先を温めようと口元に持っていくと、ジョージの居る扉の、向こう側にうごめく影を目に入れた。
まるで水中のように暗い衣を漂わせ現れたそれに声を上げそうになり、温めようとした手で口を覆う。

「!! ぁ――」
「しっ!」

フレッドが名前の膝に手をやり制し、ジョージは名前を隠すように腕で庇い、三人とも扉の窓の向こうのそれに目を見張り、息を潜める。
まるで三人の顔を、一人ずつ確認していく様の間、バクバクと心臓が鳴る。
しばらくそばを漂って、影はゆっくり漂い去ったが、安堵の息をなかなか吐けず、灯りが復旧し再び汽車が走り出すまで安心できなかった。

汽車を降りればハッフルパフの面々と再会できたのでフレッド達とはふたつ三つ話して別の馬車へ。きっと説明されるよ、などと話していた通り、大広間でダンブルドアは、汽車で一番に会ったルーピンと、新任のハグリッドの紹介に続けて、はじめに皆に伝えた。
彼らは手配書のシリウス・ブラックが逮捕されるまでホグワーツの警備を担う、アズカバンの吸魂鬼(ディメンター)で、城のあらゆる入り口を見張っているとの内容に加え、警告もなされた。

「彼らは残忍で、狙う相手も邪魔する者も容赦なく襲う。連中が諸君に危害を加えるような口実を与えるでないぞ」

気絶したって?本当に倒れた?などとさっきドラコがハリーをからかっていたのは、まさか汽車での話だろうかと名前はダンブルドアを見ていた目を伏せ考えた。
あんな物騒な生き物が乗客の誰にも危害を加えていないから、説明があるはずだなんて話していたのに。ハリーに聞くのは無礼だろうか?自分も面白がっていると思われてしまうだろうか。

「(……なんでハリーだけ?…)」

ダンブルドアの背後の窓には、まだ強く雨が打ちつけている。

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