Prisoner of Azkaban-1



名前の部屋の窓辺に、というよりマグルの世界で窓辺にそれがあっては、ひどく浮いた。いつフクロウが来たかな?名前が外の風にあたり、金やピンクがキラキラ輝くそのド派手なプレゼントを片手に取る。リボンに挿した、スフィンクス
の描かれたメッセージカードの裏面にはやたらカッコつけて"親愛なる名前"とだけ。誰と・誰からの贈り物だか、名前には簡単に分かり笑みがこぼれた。
やはり名前は今年も、できる限り日程を前倒しして新学期に備える。

ハリー達三人は皆、ホグワーツへ発つ前日、漏れ鍋の広間で再会を果たした。ウィーズリー一家のエジプト旅行の新聞を見ながら土産話をしていると、フレッド・ジョージに、両親が続けて入ってくる。ハリーに我が子にそうするように荷物の心配をして、モリーは店内を見回し少し残念そうにした。

「名前は来てないのね」

ロンから取り上げた自分たちの写真から顔も上げずにフレッドが応える。

「あっちのノクターン横丁に居るんじゃないか」
「どこだって?」
「いや?どこでも」
「… ハリー!君に話がある」

モリーが聞きそびれた代わりにアーサーが横目をやったが、気を取り直すようにハリーを呼んだ。皆からも、周囲の知らない人からも距離を置き、十分周囲に気を張りながら話されたのは、すぐそこの柱にも貼られた手配書の、脱獄犯のことだった。


翌日朝、名前はやはり人気も少ないうちからホグワーツ特急に足を入れる。ボックス席を通り過ぎる間、いつもは無人であるため、頭上の荷物を構う長身の影が視界に入るようなことは今までになく、思わず声を上げそうなほど驚き、そちらを振り向いた。

「!……」
「!……」
「あ…… お早いんですね、…」
「、君もね」

確かにと笑うとなんだか瞬きの重い笑顔を返される。軽く自己紹介をし合い、名前は彼の様子を気遣い早々に奥の席へ足を向けた。
名前の予想通りルーピンは疲弊しており、早くこの手に持ったコートを被って眠ってしまいたかった。


座ってしばらくすれば人も増え、賑やかさが増し、いつもの二人も入ってくる。前髪を長めにおろし一段と大人びた二人と、元気だったかとか、調子はどうだとか、適当に再会の挨拶を交わして、座るや否や二人は名前にのめり込むようにして、フレッドから順に改まった。

「で?どうやって抜け出した?」
「閉じ込められた中はどうだった!?」
「やっぱり何かあったのね」
「「!  あぁいや。…」」

休暇中に家に届いたアレのことだと、言葉は要らない。
あの小さな包みは、名前は用心に用心を重ね、なんと開けておらず、しかもそれが正解だったと今判明した。片手に乗るほどのあの小さな小さなギラギラ包みからは、どうやら何等かがどうにかして、開けた者を閉じ込めるギミックが飛び出すんだそうだ。
輝くような悪ガキ顔は上手をいく名前が横目で放った一言により消え失せ、代わりに へへと気まずそうに笑って見せた。

「!そうだ、名前」

ジョージが話を頑張って変えようというように、忙しく自分の荷物から取り出し、名前の隣に掛けて手渡したのは、母モリーから預かってきたもの。包み紙に二色の麻紐で、控えめに飾られている。名前はこっちは全く怪しんでなかったが、フレッドはすかさず こっちには何もない!と添える。開封する名前の手を眺めながらジョージが続けて、母さんの手作りさ、とも。
開けると様々な色の毛糸が編み込まれたマフラー。普段彼らが身に着けているものとなんだか雰囲気が似ているが、ちゃんと女の子の物と分かるような可愛らしさも感じられる。

「母さん曰く?いつもお世話になってるからって…ー」
「素敵 …」
「、」

腕を組んで偉そうなフリでふざけたフレッドに返した名前の返事は心から感激した素直な言葉だった。二人だって名前と同じように、名前はまた一段ときれいになったと思ったものだ。
パッと顔を上げ目を輝かせたそんな表情を向けられ、フレッドは一瞬戸惑い黙りこくった。名前が再びマフラーを愛おしそうに眺める横でジョージがニマニマとフレッドを見ていたので、フレッドは顔でだけ、見るなと訴えた。

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