Chamber of Secrets-10



枕に沈めた名前の表情はまだ晴れず、ずっと二人の事が頭を占めた。あんなに心配してくれるフレッドに私は…、優しく接してくれたジョージに私は…。暖炉が照らす部屋が涙でじゅわ、と滲むのを乱暴に拭い、早く寝てしまおうと、頭から振り払うように丸くなり目をぎゅっと閉じた。
同じころフレッドはベッドに腰掛け自分の両手を見つめる。こちらも あんなか弱い、肩の細い名前を乱暴に掴んで俺は…と、ジョージの励ましの甲斐無く落ち込んでいた。

…――

「名前、俺…「二人とも、昨日はごめんなさい」

翌日、大広間に入るや否や名前は真っすぐグリフィンドールの皆が座る席へ向かった。入ってすぐに、隣合って座っていた二人も名前に気付き、立ち上がろうと通路に足をやるが、立ち上がるより早く名前がそばに立ち止まった。謝ろうとしたのはフレッドも同様だったが、それも名前に追い越された。ジョージは考える素振りを少し見せ、何だっけ?と笑い立ち上がると、相棒の邪魔にならないよう 名前の肩をポンと叩いてから、少し離れたパーシーの近くを適当に選んでそっちの輪に加わった。
見送ってるとフレッドが 俺も と、名前を見上げ小さく続ける。

「俺も昨日は悪かった…」
「…… ううん」

痛かったよなと、昨日強く掴みすぎた名前に手をやると、名前は少し考えて"うん"と答えた。笑ってしまったフレッドが降ろしてしまう手を名前は取って、笑顔を返した。気まずさが消えたところで、名前、とフレッドが一度テーブルを振り返り、握っていた名前の手に、かなり年季の入った小さな本を持たせた。
『ホグワーツの歴史―別冊、優等生著』
裏表紙のほう、とフレッドに言われた通りに開くと、さらに小さな薄い冊子『特別な解説』が挟まっている。

「名前に向かって、"調べるな"は酷だろ?」

でも調べに"行き"はしないでほしいと、本から視線をうつした名前と目を合わせたフレッドは、少し照れくさそうに逸らした。
フレッドが図書館で自分のためにこれを見つけたのかと思うと信じられず、なんと言って謝ろうか考えてくれたのかと思うとそれも信じられず、ほほえましくもあり、申し訳なくも感じ、名前はまた彼の目を見て、心からお礼を言った。

名前はその小さな本を持ち歩き熟読した。登場人物はすべてアルファベット一文字でのみ書かれており、面白おかしく全文手書きで記されている、日記と呼ぶにも短い、その日その日のメモの寄せ集めのようだった。きっと図書館にも勝手にこの著者本人が置いたのだろう、さもそれっぽく背表紙に書かれた発行日は、50年前のものだった。
小さな冊子のほうには、人名が多数並び、様々な色のインクの筆跡が見られる。歴代の読者がアルファベットの人物を解き明かし続け、本を見つけた者の間でだけ、誰のアルファベットなのか解明ゲームが楽しまれ続けたといったところだろう。

"
…〜 ひとつ上のTは運ばれるMの遺体を訪ねた後、Rの元へ急ぐ。翌日、Rは魔法省に。それから姿を見ていない。まさか退学!?

Dにさては見透かされているな?T、哀れなり
"

最後の"哀れなり"を力強く消したがる者も居た様子。名前はそのページの上で、今度は冊子をめくり、Tの人名の箇所を見つけだす。

「(トム・マールヴォロ・リドル ……)」

当然、知らない名前だらけであったが、特段この日のメモの"T"は濃く、何重にも書かれており目を引いたため、名前も冊子を見るまでに至った。Tで始まる人名の中、線で消されていない名前のひとつ、まるで震えるような字で綴られたその名だけ、なんとなく名前は読み上げた。


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