02



入学以降、座学、実践と名前の魔法学校生活は順調だった。同じハッフルパフの友人と寮へ戻る途中、遠くの廊下からドカン!と爆発音が鳴り響き、その場の一年生数人と共に、咄嗟に名前も振り向き縮こまる。

「何?」
「どうせまたあの双子ね」
「あの双子?」
「グリフィンドールの。名前も入学式で見たでしょ」
「…」
「まさか分からない?ウィーズリーの双子が?」
「……天井見てたから」

友人たちは出た出た、というように笑い合う。まだ付き合いが短いとはいえこんな名前の一面はおなじみになりつつあった。図書館へ行くからと決まって言う曲がり角があるし食後の談話室にも居ないのがほとんど。
その双子が組分けを待つ間隣に居たと言われて、名前は更に驚いた。その日大広間で見た覚えている顔なんてダンブルドア先生と、握手をしたハッフルパフの上級生と同級生、
物でいくと目の前のご馳走と、浮かぶキャンドル越しにいくらでも見上げてられる天井の星空といったところだ。
あの二人は見れば分かるよと、友人たちは笑っている。よっぽど似てるのだろうと名前は察した。

じゃここで。と名前が手を振れば友人たちは慣れたように手を振り返す。詮索してこないのは名前には都合が良い。
逆方向に廊下を数歩進んだ先のドアから、そう使われていないと見える別塔に上がれる。階段の各段に歴代の先輩たちが使ったと見える古本、植木鉢、小瓶、大瓶、釜、古本、古本…。
名前は定位置の、窓に面した地べたに腰掛ける。そこは部屋とも呼べない、窓のおかげで明るいただの小さなスペースだが、ここにももちろん先輩方の痕跡は残っており、図鑑の切れ端や少し荒い跡の残る的のようなものなど、壁を見るだけでも飽きない。誰が使ってきた場所なのか考えただけでも名前はワクワクして、どんどんホグワーツというこの場所に魅了された。入学前の数日に訪れた店の中には、後から聞けばあまり噂のよくない店もあったようだった。手に入れたものを一度校内で取り出したのが友人の前だったのが幸いで、それらの店の評判と控えたほうがいいことを、名前はまとめて知ることができた。それらを広げるのにこの場所は一番ぴったりで、居心地も格別というわけだった。店の中には明らかに近付かないほうが良さそうな人も居れば、良い人も居るのにと、名前はもうとっくに懐いてしまっており、"よくない店"へ行くことを控えるつもりはさらさらなかった。

全寮の一年生で受けるはじめての飛行訓練。名前はルート探索に忙しかった。箒にうまく乗ることができれば、行く行くはどうにかして授業を抜け出してあの場所へ行く時間に充てることができないか?優等生とはとても言えない思考でキョロキョロと見回すうちに、向かい合う列の数人分あちらに、その双子を見つけた。

「(本当。すぐに分かった)」

隣同士でぼそぼそとなにか言い合い悪戯な笑みを浮かべる、まったく同じ顔。周囲はネクタイの色が違う生徒もそう驚いてはいない。本当にこの双子を知らないのは自分くらいなのだと名前は実感した。
右手を突き出して、合図の前にしっかりとイメージを。名前の思惑の必須項目に"箒にうまく乗る"がある以上、本来授業全体がそうであるが、真面目に受けるべき箇所のみ、真面目に受ける。
右手に箒が快活に収まる様を思い浮かべる。箒が応えてくれる、思い通りに飛んで行かせてくれる様を。

「「「「上がれ!」」」」

数人の箒が上がる中、名前の箒も、名前のイメージした通りに手に収まった。歓喜の表情を思わず隣の生徒に向ければ、"どうやったの!?"と言いたそうな顔を返される。皆の箒が上がるまでの短時間も、名前は次の関門の用意と辺りをキョロキョロ。一体どんなスピードで、どんなふうに飛べば、先生にも生徒にも見つかることなく辿り着けるだろう。
思惑が誰かにバレる危険など思いつきもせず、名前は箒を片手に企み続けた。

prev | top | next















×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -