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名前は新しく始まる人生がとにかく楽しみで、入学許可の手紙を読んだその日から数日眠りが浅かった。"何もそんなに早く行かなくても"と言われながら家を出た日がもうすでに懐かしい。というのも名前が必要な買い物を完全に済ませたこの日から、汽車ので出発日まではあと丸二日ある。ダイアゴン横丁へ続く道に便が良い宿の窓辺でぼんやり考えるのは、今日はあの町のどの店に入ってみようか、何を手に取ってみようか、何の話を耳に入れ、どれを記憶に留めておこうか。この新しい人生の第一歩は、一日では到底足りない。
部屋の隅に積まれた荷物の山を見るたびに、意外とたくましいものだと、名前は自分のことを不思議にすら感じる。行く店行く店で、あなたが一番乗りだとか、一人で来たのかだとか、マグルがどうとか、たくさんの同じようなことを必ず言われた。ただ手紙に書かれた通りに、使ったこともない形の鍋や、好みの羽ペンや、書かれた単語が一つもわからない本を何冊も、本当にただ書かれた通りに揃えるのだから、新入生のこどもにも、絶対にやり遂げられないわけではなかった。
この宿も、昨日お腹を満たすのに入った店も、薄暗くて埃っぽいだけで、受け入れてくれないわけでもない。もとから不安を強く感じてはいなかったが、うまくやっていけそうだと、入る店の目星をつけた名前は宿を出た。

過ごすにつれ、親同伴の同じような年代の子らや、同じローブを羽織った若者を見掛け始め、名前の心に、やっと、少しだけ、家が恋しい思いが漂った。魔法といっしょに手紙の出し方を習わなくてはと、急遽便箋を選ぶことにした。

明らかに荷物の多い、しかも動物用のカゴを持っている人の後に続けば、当日の駅への道順も、壁へ突進する恐怖を除いて支障はない。手紙が届いた日から名前の想像力はどんどん増す一方で、魔法を使いこなすシミュレーションだって抜かりない。

「(大切なのは想像力。壁を通り抜けて"こっち側の"駅へ向かい、"こっち側の"汽車に乗る。なんてことない。魔法なのだからそのくらいできなくては!)」

到底思い浮かばないことを、思い浮かべるのがコツだ。この数日で入った古本屋の、白紙の綴りにふと残されていた走り書きが、さっそく名前の役に立った。"マグル"と、宛名のような箇所は何重も囲んで強調されている。本当にマグルとやらである自分に届くなんてラッキーだと、壁をすり抜けてバクバクうるさい心臓を落ち着かせるように息を少し吐いて、気を取り直して足を進めた。

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