Chamber of Secrets-6
「ハリー。私どうしても聞きたいことがあって。あの最初の事件の日のこと」
「ミセス・ノリスの?」
不審がる様子もなく返してくれるハリーに安堵の笑顔を見せ、名前はさらに気を引き締める。本当に不審者扱いされてしまう分かれ道はここからだ。
「何か生き物の仕業のようだった?」
「?そりゃ、魔法使いにかかれば、…」
「、そうよね、そうじゃくって。…例えば魔法生物とか」
「?… 何?」
「メドゥーサ。知らない?」
ハリーはしかめて首を振る。このままおかしなことを言う魔法生物マニアの先輩となるのはまずいと、なんとか名前は持ち直すよう努める。
何事だと顔を見合わせる後ろのロンとハーマイオニーは、名前の背後に迫る二つの影に気付いた。
「メドゥーサって魔法生物が関係あるように思えて。蛇って書かれてることもあるんだけど。絵画にも、ゴースト達にも聞いたんだけど、口止めされてるみたいに何も教えてくれないの。…変じゃない?」
「……」
「それがね、目を見ると石に…」
「「うちのがすまないね、ハリー」」
「「!」」
左右の肩に乗せられた大きな手に名前の体は強張る。
ハリーは名前から、彼女の両隣に現れたフレッドとジョージに目をうつした。名前を不審に思うことは全くせず、むしろ確かに怪しいと真剣に聞いていたので、彼女と同じくらい驚いた。
手は名前の肩のまま、フレッドのもう片方の手には、例の図鑑。名前が奪おうとすると、届かない高さまでヒョイと上げられる。
「すっかり君と魔法生物にお熱でな」
「違うったら!ハリー、二人に耳貸しちゃだめよ」
「名前、こんな昼間っから飛ばしすぎだよ。もっと夜更けに、スマートに誘惑しなくちゃ」
「ジョージもやめて!…ハリーごめんなさい。さっきの話は忘れて」
結果すっかり、おかしなことを言う魔法生物マニアの先輩になってしまったと意気消沈する名前に、いや、とだけ返して、ロンとハーマイオニーとともに去るのを見送る。
「「……」」
フレッドから差し出される本を取る手は気怠そうにも見え、茶化しに入った二人は目を合わす。
二人は事件以降、名前がこの図鑑の、いつも同じ箇所を見返しているのに気付いていた。自分たちの悪戯に関する調べものの協力とは、今回はわけが違う。ハリーを探すのを茶化す気持ちも少々あったが、それは好奇心や探求心でぐんぐん突き進む名前を、なんとか阻止してでも危険から遠ざけたい気持ちのついでに過ぎなかった。
ハリー達三人はというと、こんな昼間っから薬を煎じに、誰も寄り付かない女子トイレを目指した。