Philosopher’s Stone-10
お菓子をさげてハリーのベッドを尋ねる三年生三人組に、くれぐれも静かにと言い聞かせたマダムポンフリーは別室へ。きっと全生徒にそうしているわけでなくこの三人が来たことによるものだろう。各々、すでにたくさんの差し入れに自分のものを加えたり、枕元を覗きハリーの様子をうかがったり、ベッドの隅に腰掛けたりする。座ってすぐにジョージが口を開いた。
「ハリー、よく寝てるなぁ」
「頑張ったねハリー」
「しーっ!やめろよ」
眠るハリーに屈んで声を掛ける名前の腕を掴んでフレッドが引き離す。
「俺たちを頼りもしないで」
「まったくだ。こっちには名前が居るってのに」
「……」
名前はハリーの寝顔を眺める。額の物騒な傷が似合わない、自分よりも年下の、一見まだ子供であるこの子に、一体どんな試練が待っているのか。
ここへ来て魔法を学ぶのが、正解だったのか。名前が頻りに不安がるのは、
「(もし 私が"例のあの人"だったら……)」
弱っているのが不幸中の幸いなのか。自分だったら方を付けようと必死に力を取り戻すし、魔法を学ばれては困ると感じ、阻止なんかもしてしまうだろう。名前の想像は、考え込めば込むほど、無限に膨らむが、
「わしの決断を信じてほしい。」
「わしのことを」
「ハリーのことも。」
「そのときは力になれたらいいんだけど」
名前は夢でそう言われた通りにするほかない。この子のどんな力になれるだろうか。少し考えて二人を振り向くと浮かない顔をやっとやめたと、フレッドとジョージが笑ってみせる。二人は弟を含める三人の動向はさることながら、それを心配そうに見つめる名前のことも、最近とくに気になっていた。
「「なれるさ」」
なれない筈がないというように簡単に言ってのける二人に、笑顔を返す。
優勝カップは数名の一年生たちが上げた功績によりグリフィンドールのものに。スリザリンのテーブルを除くすべての席が沸き、大広間に歓声が満ちた。拍手を送りつつ"あの子たちすごいね!"と友人に話す名前の目がふとダンブルドアをうつすとちょうど名前へ、まるでしっかり手に持たせるようなウィンクが送られた。
あの夢は彼によるものだと確信した名前は、笑顔を返して、再びグリフィンドールへ拍手と歓声を送った。