Philosopher’s Stone-6
スリザリン対グリフィンドール。歓声に包まれながらゲートが開くと、両チームの選手が箒で飛び出し、一層会場を沸かせた。
「名前、来たわよ!」
「!」
例年通り、フレッドとジョージはハッフルパフ席を目掛けて急下降、一気に上昇して名前と片手ずつハイタッチ。名前以外が二人の箒を避ける様はもう一種の伝統パフォーマンスだった。
ハリーもそれを眺め、やはりロンが言っていたような物騒な人物には思えないと、周りの友人と笑う名前の笑顔に少しつられながら眺める。
配置につくと緊張と不安は簡単に蘇り、ハリーの顔を強張らせた。
試合展開は今年も息を呑むもの。
スリザリンの狡い手や乱暴な行為がグリフィンドールを襲うたび、名前は顔を背けた。落ちるウッドにも、アンジェリーナにも、自分が痛いように顔を歪ませる。名前は正直、毎年勝敗はどうだってよく、いつだって、選手であるフレッドとジョージが怪我無く終えてほしいだけだった。
選手が減りすっかりスリザリンが有利になりつつある中、最後の希望に名前はハリーを探して叫ぶ。
「ハリー!!頑張ってー!!」
「「「!?」」」
ハッフルパフ生が名前の声にみなハリーを見ると、スニッチを追うハリーの箒の異変に一斉に目を見張った。故障だとかなんの真似だとか飛び交う中、後方から友人の大好きな先輩さんが声を上げた。
「誰かの呪文だ!汚いぞ!反則だ!!」
「(素敵………)」「見てらんない…!!」
目をハートにして振り向く友人の隣で名前は、ハリーが今にも落ちそうで顔を覆う隙間からしか見守られずにいた。
なんとか持ち直し、スニッチを追いかけるが、立っていた箒から転がり落ちてしまったときなんか、会場の驚きの声の中名前は悲鳴を上げてしまった。驚いた友人が急いで名前の両肩を支える。
起き上がり吐きそうな様子のハリーを、悲鳴とともに口を抑えた手をどけられないまま名前は見つめたが、ハリーの口からスニッチが飛び出し、笛の合図が鳴るまで緊張は走り続けた。
歓声の中、呪いが解けたように名前は友人に寄りかかって心底安堵した。
「グリフィンドールの勝利!」
「「「ワァーーーー!」」」
グリフィンドールの選手たちは上空からハリーに拍手を送り、フレッドとジョージ互いのクラブをぶつけ鳴らして、ハリーに歓声を送った。
…――
「今年はちゃんと見ててくれた?」
「アンジェリーナ…どこもなんともない?」
制服姿になったアンジェリーナと廊下で鉢合わせ、さっそく毎年クィディッチに肝を冷やすことを茶化される。労って名前が彼女の手を握ると気さくな笑顔を返された。
「フレッドとジョージどこかしら?」
「?さぁ… 図書室から来たけど見てないよ」
「そう?名前と一緒か、名前に聞けば分かると思ったんだけどね…」
肩をすくめると行ってしまったが、すぐに思い出したように数歩先で再び名前に、面白そうに笑いながら振り向いた。
「名前も二人を探して謝らなきゃ。特にフレッドは不機嫌だったよー!」
「?フレッド…? 謝るって何を!?」
何が面白いのやら、何を怒っているのやら混乱する名前に、アンジェリーナは怒った顔の真似をして告げた。
「ニューシーカーばっか応援しやがって。だって」
悪戯に笑ったアンジェリーナは、目を丸くしたまま固まってしまった名前はそのままにして、歩き出してしまった。