Order of the Phoenix-29



激しい衝突風と火花に、何度も目を閉じる。ヴォルデモートはダンブルドアの延長線上にハリーを捕らえ、ハリー達の頭上を飛び散る魔力で次々欠けさせる。

「ッ!!」「ハリー!!」

小さくなり衝撃に耐えるハリーと名前から、なんとか逸らせようとダンブルドアは杖に力を籠める。

―ゴォォ…―

「―― …」

ヴォルデモートが突如作りだした大きな炎の玉に、見張る目も頬も、一気に熱を帯びる。それは天井まで及び蛇を型どると、ダンブルドアへ襲い掛かった。感じたことのない規模の魔法に目を見張り、眩暈を覚えた。体を持っていかれそうなほど巻き起こる衝撃風に、名前は咄嗟に壁に利き手を突いた。

「う゛ぅっ…!!」

庇うように縮こまる名前の肩にハリーが両手をやる。顔を上げると、名前はそのまま、ダンブルドアの杖に見入った。銅像のふもとの水を集めながら、ヴォルデモートを閉じ込め自由を奪った。

「…!」

ハリーもまた名前を追い越し、ダンブルドアの元まで寄って目を見張る。
水は巨大に変化を遂げるも、振り払うヴォルデモートによって散り、再び威力のけた違いの攻防戦になる。

―バリバリバリ…!!―

ヴォルデモートの大声にならって、爆発するような魔力の波動ですべての窓が割れ通路に投げ出されたダンブルドアもハリーも、物陰の名前も顔を背け衝撃に耐える。すべての鋭い破片がそのまま、ヴォルデモートの構えたとおりに彼らを狙う。怪しく笑うヴォルデモートに、ダンブルドアも杖を構える。ハリーと名前が衝撃に備えていると、襲い掛かる破片をすべて粉よりも小さく砕きそこらを漂わせた。
面白くないというように笑顔を消え失せさせ、ヴォルデモートは風に乗るように消えてしまった。

「……!」

佇むダンブルドアとハリーの後ろ姿。名前もどっと疲れを感じるような心地で壁に背を預けていると、突如息を詰まらせたようなハリーの声に、肩を跳ねさせた。倒れ込んでしまったハリーは明らかに顔色に異変があり、ひどく脂汗をかいている。

「ハ…―「寄るな!名前」

こちらも向かないまま、怒号のようなダンブルドアの声が響く。名前は利き手を抱きしめて、ハリーの異変に怯え硬直する。ゆっくりとダンブルドアがハリーのそばに膝を着くと、まるでハリーでない姿が、恨めしそうに視線を返した。

「 貴様の負けだ  老いぼれ 」
「…! …」
「う゛っ…!!ア゛ぁ…!!!」

先ほどまでの恐怖の象徴と嫌でも姿は重なり、名前は瞬きも忘れ震える。
両親を襲った悲劇、シリウスの死、目前に襲い掛かるディメンター…苦しむハリーの中に、暗い記憶が次々と思い返される。
ダンブルドアは、ハリーに対してのみ、静かに声を届ける。

「ハリー。
あやつといかに似ているかではない。いかに違うかだ。ハリー」

「うわぁ゛ぁ゛…!!! ……! …!」


駆け付けたロンやハーマイオニーたち。名前の目を見張る先、苦しみ切ったハリーを見て絶句する。瞳に彼らを映せば、ハリーの中を流れる記憶はすぐに、彼らと交わした笑顔に変わっていった。
ようやく、ハリーのものである声が、その口から発せられた。

「弱いのはお前だ」

ダンブルドアは目を見開く。
笑顔を向けるロン、ハーマイオニー。鏡の中の両親。
友人たちの記憶の中には、本部で再会を喜んだ 案じてくれていた名前の姿も。

「愛を知らない。 友情も。
哀れなやつだ… …―――!!!」


安堵も束の間、再びハリーを襲い、体から逃げるように舞った塵は柱のように一時ハリーの周辺に留まった。ダンブルドアが見上げる塵の中の空間に、ヴォルデモートの姿があった。

「愚かなポッターめ。お前は失うのだ。…すべてを

――!」

勝ち誇ったような顔は、大臣と闇払いの来訪に、消え失せた。
荒れ果てた魔法省内、その変貌は見るものすべてを圧倒し、恐怖させた。

大臣もまた、帝王の姿を捉えていた。ハリーを支えるダンブルドアの写真は新聞の一面に取り上げられ、ヴォルデモート復活がようやく、真実として報じられた。

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