Order of the Phoenix-30



ダンブルドア復職を無事に迎え、傷だらけのダンブルドア軍団を除いては、ホグワーツには賑やかな生徒の声が再び戻った。
校長室を後にしたハリーが、すべての絵画を元の位置に掛け直すフィルチのそばを通りかかると、階段の下方に、隅の小さな額縁に向かう名前の姿を見つけた。

『もう会えないかと思ったのよ』
「泣かないで、」
『…貴女もあの双子に散々泣いてたくせに』

「名前」
「! ハリー」

名前が顔なじみの令嬢の絵画から振り返ると、彼女も涙を指ですくって横目を寄越した。手近の階段が動きそうだったので、名前は誤魔化すようにハリーをそちらへ誘導し、二人慣れた足取りで飛び乗る。絵画へ少し手を振ってハリーに並べば、ハリーの視線は名前の手に落ちた。手首に、指も数本、包帯で固定されている。

「具合どう?」
「こう見えてだいぶいいんだよ。マダムポンフリーとムーディ先生が、使う薬品のことで口論になったの」

ムーディの出す薬品名を劇薬だ!とマダムポンフリーは激怒し、マダムポンフリーの出す薬品名を、治るころにゃ名前が婆さんになっちまう!とムーディが蹴落とした。結果マダムポンフリーの処方のもと、経過は良好だった。
おもしろいでしょ?と目で言う名前にハリーも笑うが、痛々しい、不自由そうな名前の状態に、どうしても出て来そうになる"ごめん"を、誤魔化し、黙った。名前はもちろん感じ取り、ハリー、と敢えてその手の、自由のきく指でハリーのローブを掴んだ。思わずハリーがバッと振り返り案じる。
階段の途中、真っすぐに向き合って真剣に言い聞かせる。

「気負わないでね。私は …」
「…」
「私と、私の大切な人のために、強くなるからね」

君と、君の大切な人のために、君に力を得てほしい。シリウスを思い浮かべれば声が震えるのは仕方ない。堪えるように静かに綴った名前に、ハリーも真剣に頷いて返す。シリウスの名を出さなくとも、優しく笑って手をやってくれる名前に、彼が関わっていることはなんとなくハリーも想像がついた。


…――

「校長と話して考えた」
「何を?」
「僕たちはヴォルデモートにないものを持ってる。…"守るべきもの"だ」

帰路、ハリーは名前との会話を落とし込むように、自然と歩み寄り集まった仲間を見渡して、大切に、大切に言葉にした。

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