Order of the Phoenix-28



交戦する光に目を閉じながら、身を低くしてこぼれ弾をよけて走る。皆のいるほうを目指しながら、名前はアーチへ目を向けた。交戦の真っ只中、シリウスとともに、ハリーはそこに居る。

「ハリー…! シリウス、」
―"アバダ・ケダブラ"―

その瞬間は、名前の目に飛び込み、岩陰を進んでいた足を止めさせる。
ルシウスを吹き飛ばした瞬間、別方向から飛ばされたベラトリックスの呪文は、意表をつかれたシリウスに命中した。
まるで何か伝えるように、目に光を無くすハリーに向き直り、シリウスは漂うようにアーチへ吸い込まれた。

「(……、 グリ )」

思わずその名を呼ぶ、見開いた名前の目からぽた、と涙が走る。取り残されたようなハリーが、見るからに動揺し、打ちひしがれる。
悲しみ、泣きわめくハリーを、すぐにルーピンが抑え込む。悲痛な叫びに名前も震え、涙を流すが、ふと、逃げにかかるベラトリックスの影へ目を向けた。

「…名前だめだ。 追うな! 名前!!」

背後を守っていたムーディは名前の異変を感じ取るが、負傷も顧みず、逃がしてはならないと、ベラトリックスの消えたほうへ名前は走り出す。
すぐに追いついたハリーの影を、目の端に捉える。

「犬用の出入り口も付けておいてくれ」
「要らないよ。ハリーと来るんだもの」


「…っ 」

「…マグルの世界へも必ず、君に会いに行く。ハリーと共に」
「ありがとう。……グリは私の友達だからね」
「あぁ。そうさ!」


「(シリウス…! シリウス!)」

走りながら名前は思い返される彼の笑顔に、温かさに、息を震わせる。
此処には仲間も、駆けつけてくれた本部の皆も居る。恨む感情は溢れるようにあれど絶対にこの手で敵討ちをと、無謀な考えはないが、隣を走るハリーはきっと違うだろう。悲しみも、胸の痛みも、自分と比になるものではないだろう。
かける言葉も見つからない。それでもとにかく、この子を守らなくては。名前はそう刻み、負傷していない手で両目を拭った。


「シリウスを殺してやった〜〜! アハハハ!!」
「"クルーシオ!!!!"」 「!」

ぐんと追い抜いたハリーが放った呪文は、彼のものとは思えないような声色で、思わず名前は減速し目を見張った。
戸惑いながら、援護するよう反対側へ回り、掴みなれないほうの手で杖をベラトリックスへ構える。術をくらい気怠そうに名前を振り返るベラトリックスに注意を払っていると、ふと、いつもハリーに感じて違和感が再びやってきた。

― 本気でやらねば効かん。ハリー ―


― シリウスを殺した女だ やるがいい―

「ハリー?…」

― 呪文は知っておろう ―

「ハリー!  ――!」

何かを感じ取る様子のベラトリックスの表情も、名前は見逃さない。ふと、背後か寒気を感じ取ると、氷に閉じ込められたような感覚に陥った。動けなくなった名前をゆったりと追い抜く。
恐怖を具現化したようなオーラに息をのみ、硬直する。漂うそれはそのままハリーの背後にスッと佇んだ。とうとうヴォルデモートが、姿を現した。


「…!」 ―カランッカラン…!―

青くなった名前の視線を追って、ハリーがヴォルデモートへ振り返り構えるが、片手で簡単に杖を払われた。ふと耳に炎のような音が届く。脇の暖炉のほうから、ダンブルドアがやって来た。名前のすぐそばを通り過ぎる間、目は名前の利き手を捉えた。隠すように、名前の前へ立つ。

「愚かじゃな、トム。じき闇払いが来る」
「その前に俺様は消え貴様は  死んでおるわ」

瞬間、巨大な魔力が衝突し突風を巻き起こす。直前にダンブルドアに"触れずに"突き飛ばされたハリーと名前は反対の物陰まで一気に移動した。

「!!」

片手でハリーを懸命に支えながら、名前は別の暖炉へ駆け込み姿を消したベラトリックスを見て、歯を食いしばった。

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