Order of the Phoenix-26
とうとうルシウスらも、デスイーター同様、ゆっくりと距離を詰め始めた。
「不思議ではないか?なぜお前と帝王の間に絆があるのか…なぜ帝王は赤ん坊のお前を殺せなかったか…
その額の傷の謎を知りたくないか?
答えは、お前の手の中にある」
名前はデスイーターに杖を向けたまま、深呼吸して、ハリーを信じる気持ちを強くした。口車に乗らないで、耳を向けないで。強く願いながら、ハリーの声を待つ。
「私に寄越せば、すべてを見せてやろう…!」
歩み寄るデスイーターの影はいつの間にか二つになった。不気味な面が、名前と、名前の背後のルーナやジニーをじっと見つめる。
「…… 14年も待った」
「、分かるとも…」
なんとも薄っぺらい、慈しむような表情で、ルシウスはハリーに相槌を返す。
「
まだ待てる。 ―――今だ!!!」
"ステューピファイ!!"
ハリーの合図で、全員四方へ呪文を繰り出すと、一目散に出口を目指した。だが黒い煙や砂のように縦横無尽に飛び駆ける彼らを、そう簡単には振り払えない。いつしか散り散りになり、暗闇のいたるところから、逃げ惑う皆の呪文が響く。
"レビコーパス!"
"ペトリフィカス・トタルス!"
「…! 」
走る名前の目前に立ちはだかるデスイーター。面をとり不気味に笑うその表情に、昨年の恐怖が一瞬蘇る。
―パチン!― 「!」
「ステューピファイ!!」
指の音で杖を払い呪文を飛ばすと、一気に黒い煙となって後退し、杖を回収すると彼はそのまま狙いを変え走るハリーを目掛けた。
「! ハリー!!」
「ステューピファイ!!」
名前の声に気付くころにはすぐ隣をニタニタと付き纏われるも、呪文でなんとか払いのけ、しばらく駆ければ、再び一か所に皆一気に集まった。
「! レダクト!」
追うデスイーターの一人を見つけたジニーが、即座に呪文を飛ばす。喰らったデスイーターの衝撃で、高く高く積まれた棚が崩壊を始め、水晶が落下しながら徐々に押し寄せた。
「走って… 走って!!」
思わず一時呆然とするも、ジニーやネビルの肩に手をやり名前がなんとか誘導する。見惚れるルーナの手をネビルが引き、もうすぐそこまで押し寄せ破裂音をけたたましく立てる水晶から懸命に逃げる。
「ルーナ!!」
一番後ろのルーナを、名前は気に掛ける。少し下がりルーナのすぐ後ろについた瞬間、すぐそばで割れた水晶の破片に足を取られた。
「!!?」
「名前!!」「だめよいって!早く!!」
足のもつれた名前と、振り返ったルーナが、皆から数歩分も後退してしまう。名前は立ち直りながらポケットから取り出したものを、力いっぱい踏みつけた。
―バシュ!!!― 「!!」
突如ロケットのように足裏から火花を散らしてスピードをあげた名前が、追いついたルーナを抱きしめてドアの外へ一気に飛び出した。足場を無くし一階へ叩きつけられる直前、体は浮かび、みな衝撃は数センチ分で済んだ。
「、名前ありがとう…」
「大丈夫? はぁ…」
ルーナを支える、もう片方の手で片方の靴の裏から、踏みつけた小さな袋を剥がし、目を落とす。ピンヒールとロケットの絵に"Bring!Heeeel"と書かれた派手なパッケージは、あの日塔の窓辺にフレッド達から届けられた、逃亡にピッタリな新商品だった。
アーチが佇むその空間に戸惑い、ハーマイオニーはしきりに出ようと促す。名前は追ってこないルシウス達を不審に思いながら、皆と同様にあたりを見回した。