Order of the Phoenix-18



「俺たちももうポートキーで向かうんだよ」
「そう、…ただの夢かもしれないんだよね?」
「もし現実だって父さんならきっと大丈夫。…心配かけたくなかったけど、名前の耳にも入れとかないとと思ってさ。ハリーのことも気に掛けてたろ」
「……」

ジョージも話しながら、名前の肘あたりに手をやる。昨夜の様子を目の当たりにすれば現実としか思いようがなかったが、それを伏せるのはジョージの優しさだった。
呆然と、頷くことしかできない名前は二人の心配どおりハリーやアーサーを案じた。ヴォルデモート復活の波が、いよいよ身近へ迫ってきていることを重い知らせれ、眩暈がする気分だった。戸惑いは拭えないまま、名前はどうにか気を取り直す。

「二人も気を付けて、…アーサーさんによろしく伝えて。モリーさんにも」
「ああ。名前もな。アパートへ手紙を出すよ」


「…本部の一員だからじゃないぞ。名前だから話にきたんだ」
「、」

やっと口をひらいたかと思えば、フレッドはまっすぐに名前を見てそう言った。心から嬉しいのに、事が事なせいで笑顔を見せたりはできず、フレッドをうつした目が潤み名前の鼻を赤らませた。去年の姿とも、数年前同じ場所で待ち伏せされ口論した姿とも、今の自分達はまるで違う。
なんとか頬に伝わないようこらえるが、頷き二人へ向ける目はもう涙があふれ切っていた。

少し歩いて、見送る名前を振り返ったフレッドは、明け方の冷えた城の隅、自分達を見送る小さな彼女の姿に、本部で耳に入れた話を思い返しながら、彼女にも何も起こらないことを切に願い、兄弟たちとともに父のもとへ急いだ。


……――

アーサーはまだところどころ痛々しい状態ではあったが、退院を迎えクリスマスを皆と本部で過ごせた。子供たちへプレゼントと、皆でハリーへ乾杯し、食事を囲んだ。皆へ配られたプレゼントの山があった場所に残ったひとつの小さな包みは、名前に渡すようフレッドジョージにこと付けられた。

「今日直接渡したかったけど、やっぱり来れなかったわね」
「名前も来たかったと思うよ。母さんたちに会いたがってた。これは俺とジョージで責任もって渡しとくから」

どこか表情を暗くするモリーは、名前に限らず子供たちへの心配が尽きない。
次のクリスマスは呼んで名前にも楽しんでもらおうとか、なんとか気分を晴らそうと話すフレッド達もまた、名前に早く会いたいのは同じ気持ちだった。返されるモリーの笑みは、切なそうにもうかがえた。


休暇中の名前は家族たちのもとに留まらず、本部へすらも行き来を制限されていて、状況は新学期前より悪化していた。仕方ないことであるのはよく理解していたし反発するつもりもないが、こうもシリウスや、ハーマイオニーやフレッドジョージ、皆の手紙に同様に綴られていては少し参った。ダンブルドアからはクリスマスの食卓の写真のポストカード、ムーディからはこれまでのような呪文書や魔法書の切れ端、それぞれにもきちんと、くれぐれも詩集の行先を越さないよう記されている。アーサーのお見舞いすらかなわず、フクロウに預ける彼らへの返事でうかがうことしかできなかった。
皆のことを案じながら、必要の部屋で得たスキルを磨くことに専念して、窮屈な休暇を過ごしていた。

―リンリン  リリン…―

「…?」

ふとグラスをティースプーンで鳴らすような音が耳に届く。名前が音をたどると、ダンブルドアからのポストカードに辿り着いた。クリスマスディナーの写真の隅、ティースプーンが軽快にゆれ、グラスを鳴らしていた。

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