Order of the Phoenix-16



ハリーから教えられる魔法の数々は、以前少しでも彼をイカれた奴呼ばわりしていた、誰のことも完全に黙らせ、信用させた。皆でともに、熱心にハリーに教わり、実践を重ね、数日で部屋がバレてしまったフィルチをかわし、つとめて普通に授業を受け続けた。

「名前!!」
「ッわぁ!?」 ―バシャッ!!―

嬉々としてすぐそばまで駆け寄り突然声を上げたナイジェルに驚き、自分の手に集中していた名前は咄嗟に、彼にいっぱいの水を投げ飛ばすようにして水浸しにしてしまった。ひっくり返ったナイジェルと名前の驚きっぷりに周囲が笑い、少し遠くにいたフレッドが目を向ける。

「― じゃ 次にフレッド」
「? おいったら。兄貴の番だよ」

やだ、ごめんね…と鳴らした指ですべての水を払ってあげ、両手でナイジェルを引いて立たせるのを、自分も輪にいるように少し笑って眺める。皆と心から笑っている名前の笑顔は、なんだか懐かしくも思えた。

「フレッド?」

名前があんな笑顔で自分を見たのはいつが最後だったか…

「はぁ…。 フレッド!」
「、…」

考えにふけていると、名前やナイジェル達がなんだかこちらを見そうだったので、フレッドは自然を装って目を逸らした。
するとこちらのジョージをはじめとする、あたりの皆が自分を見ていたので、何事か理解するのに時間がかかった。

「…今呼んだか?」
「ずぅっと呼んでたよ」

応えるロンも、ハリー達も笑っている。名前達が目を向けたのはあまりにフレッドが呼ばれ続けるからで、ハリー達もまた、フレッドが見てるのが名前達のほうだと容易く分かるのが面白く、状況が分かっていないのはフレッドだけだった。
ひとしきり笑って、練習を再開した。


……――

「(賭けた)」
「(乗った)」

ロン対ハーマイオニーの練習を、皆が並んで見守る。向かいに居る名前とふと目があうが二人はニコ、と笑ってみせ、名前はというと、わざとらしく「?」とかえしたがやり取りはもちろん耳に届いており、ロンに向き直る頃には相変わらずの二人に笑いがこぼれてしまっていた。


…――

またとある日は実践の合間に、輪になり名前が皆へ注意を促した。

「真実薬は無味無臭なの。事前に分かる方法はないから、絶対に警戒してね」
「そんな…飲むフリは?」
「ネビル、出来れば囚人たちもやってる」
「…生徒には使用禁止でしょ。あの意地悪女でもさすがに使わないんじゃ」
「「絶対、使う」」

早々に罰則をくらった名前とハリーは声も、表情も同じものを寄越した。説得力にハーマイオニーは黙ったので、代わりにロンが、名前はなんでそんな薬のことまで知ってるの?と尋ねた。

「… 業績よ」
「え? "業績"?…?」

名前は思わずフレッドジョージへ目を向ける。なんだそれ…と皆が顔を見合わせハテナを飛ばす中、二人はというと笑いを押し殺しつつ、名前へ視線を返していた。

必要の部屋で皆で励む時間は、彼らの間にできていた溝を、徐々に埋めてくれつつあるように思えた。

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