Order of the Phoenix-12
校外、騒ぎを聞きつけ生徒達が皆集まりトレローニーに心配の目を向ける。おどおどと戸惑う彼女と対照的に、彼女の荷物のトランクを颯爽と運びそばへ置く、アンブリッジ賛成派のフィルチ。あらわれたアンブリッジもまた、特に気に留めない普段通りの表情をしている。
「…!16年間 ホグワーツで教えてきました…。我が家も同然。こんな仕打ちできませんわ…!」
「できますのよ」
軽々しく書類を見せつけるアンブリッジ。泣き出したトレローニーのもとにマクゴナガルが駆け付ける。
「ミネルバ…!」「…」
「…何か?」
「言いたいことはあります…!」
権力だけが立ちはだかり邪魔で何も言えないもどかしさが、トレローニーを抱きしめるマクゴナガルの様子から皆へ伝わる。そのもどかしさは皆も同じだったが、ふと門を開ける音が響きアンブリッジは振り返った。
そこにはダンブルドアが立っており、アンブリッジはさも気に留めないような表情を向ける。
「マクゴナガル先生、シビルを中へ」
「シビル、こちらへ」
「ありがとう…!! うぅ…」
ダンブルドアが歩み寄り少し遅れて、詩集を持った名前が足早に、門から生徒達のもとを目指した。"! 名前…"と漏らしたのはフレッドジョージ。ハリーもまた目を向けており、詩集を持っていたことから、タイミングよく彼女が行動に出たのだと察しがついた。
「ダンブルドア。お忘れ?法令23条により私の権限は…―」
「教師を解雇できてもここから追い出す権利はない。それは校長の権限じゃ」
「今はね」
「…… 、勉強へ戻れ」
笑みを浮かべるアンブリッジ。言葉の意図を怪しみながら、皆ダンブルドアの声によって、校内を目指した。先日ハリーに止められた意味も理解している名前は、それ以上ダンブルドアへ何か言ったり、彼に駆け付けようとはしなかったが、今度はハリーがダンブルドアへ急いで呼びかけた。
「先生!…」
「……」
「ダンブルドア先生、待って!」
(! ハリー…)
周囲の生徒も、名前も、ハリーに振り向いてしまうほどの様子なのに、ダンブルドア本人だけが、ハリーがまるでいないかのように目もくれず、足早にその場を去った。案じた名前が詩集を抱きしめ、佇むハリーに歩み寄るも何も言えず、背中に少し手をやって生徒たちの波に混ざり、ハリーのそばを離れた。