Order of the Phoenix-10



アンブリッジは学年問わず、担当するすべての時間、同じルール下で授業をおこなった。防衛術の実践はしないのかと手を挙げて問うた生徒は、のちのハーマイオニーだけでなく、今この時間の、上級生のクラスも同様だった。今しがた鼻で笑ったスリザリンの男子生徒は、アンブリッジの杖の一振りで姿勢も制服もすべて一瞬で強制的に正された。

「ここは学校です。真面目に試験に取り組めば十分。教室で防衛呪文は不要です。勿論、指を鳴らすだとかいう行動もね」
「、」

広間で感じた錯覚は本物であったようだ。なんとか匂いから気を紛らそうと虚無を見ていた視線を、名前はパッとアンブリッジへ向ける。同じく後方のフレッドジョージは、同じようにパッと、名前のほうを見た。明らかに彼女を差した表現だった。名前は戸惑いながらも、こちらをニコニコと見るアンブリッジに口をひらいた。

「、そう仰らなくてもしませんよ」
「出来ませんの間違いでしょう? やってみせて?」
「? …」
「ウフフ!作り話に振り回されるつもりはありません」

一部の女の子達、後方のフレッドジョージと、名前のそれを目にしたことがある友人達だけが不満の表情を見合わせる。あとの生徒はなんのことだか分からず、ただ名前とアンブリッジへ目を向けた。

「なんの話だ?名前お前、何を隠してる?」
「この子は何も隠してないわ。やめなさいよ、怖いからって」

正された着こなしのスリザリン生が名前に突っかかるが、同じ寮の生徒が遮り、まるでアンブリッジのことも差すように強調した。名前は、ハリーとまではいかないが自分も少なからず的にされている可能性があるとか、気を付けようといか、どこか客観的に考えながら傍観していた。そんな横顔へフレッドが目を向けていると、更に甲高いアンブリッジの笑い声が響く。

「では試験の説明…―!!」

―パチン!―
―シュゥゥッ パンっ!!―

アンブリッジの目の高さで、小さな花火を生み出した。名前は鳴らした指を広げ"見せろっていうから…"と少し肩をすくめた。
あんぐり口を開けるスリザリン生と、思わずこみ上げる笑い声を抑え"名前…!(あんた最高よ!)"などと漏らす友人たち。またそれが花火だったものだからフレッドジョージに至っては彼女とすぐにでもハイタッチしたい気分だった。
名前の中で少し、数年前の幼い名前の心が蘇ったに過ぎなかっただけだが、硬直したアンブリッジの両目は、怒りに染まり、名前を凝視していた。

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