Order of the Phoenix-9



「、……」
「? …」

広間入り口でふと振り返ったフレッドと偶々ぶつかりそうになり、名前は少し見上げてスッと避けて、同じ寮の皆とともに足を進めた。フレッドが振り返って探した影はもちろん彼女だったので、そこだったのかと目で追う。

「相棒、変だぞさっきから。名前なら心配ない」

もう無事ホグワーツに着いたじゃないかと、ジョージが落ち着かせる。フレッドは汽車で違うボックス席に座る間も、汽車を降りてすぐも、ちょくちょく、どこに居るか認識するように名前を探した。何気なくしているつもりだったろうが、ジョージには丸分かりで、広間前でやっと、肩に手を置き言い聞かせた。駅では同じくそわそわしていたジョージも、時間とともに警戒も心配もさすがに薄れていたが

「…まったく、どこでそんな技法を …」

両手を包みあのように心配される彼女を見てしまったフレッドとしては、それこそポートキーの本の中ででも目を離せない心地でいた。もう去年のように、気が付かない間に彼女が傷付き悲しんでいたなどという事態が、あってはならない。フレッドは強くそう思っていた。

「…う、 いやな匂いね」
「そ? 美味しそう〜」

友人は目の前に並ぶスイーツに表情が華やぐ。名前は甘すぎる匂いに座ってすぐにしかめた。その匂いはチョコや砂糖の出せるものではなく、鼻につきすぎる、芯まで濃いコロンの甘ったらしい匂いだ。クリームを口に運び顔をとろけさせる友人を眺めていると、ダンブルドアが皆へ呼びかけた。

「今年は先生が二人変わる。グラブリー・プランク先生が、ハグリッド先生の不在中"魔法生物飼育学"を担当……――」
「(、 あの人ね……)」

ダンブルドアが後方を差した教師陣の列、彼の視線よりもっと右の、一番隅の席の女性に名前はしかめっ面を向けた。ピンク色ですべてをコーディネートした彼女が、このコロンを放っていると名前は目でも分かった気がした。

「"闇の魔術に対する防衛術"担当はアンブリッジ先生じゃ。先生のご検討を祈ろう。さて、管理人のフィルチさんからの要請が……―」

はた、と皆がアンブリッジへ目を向ける。すでにフィルチの話をし始めなんとなく早く話を変えたそうにもうかがえるダンブルドアの声を、アンブリッジの高い高い咳払いが塞き止め、一度沈黙を呼んだ。ゆっくりと前へ出てくる彼女のヒールの音が、静かになった広間にやけに響く。彼女は尋問に居た、とハリーに耳打ちされるハーマイオニーは振りむきざまに、アンブリッジの動きに合わせて強まる香りにうつむく名前をふと目にとめた。隣の友人が手を貸す。
"眠いのかな?"とジョージももれなく、名前を見たまま隣のフレッドの腕を小突き異変を知らせた。視線を追い名前を見たフレッドは、やはりしかめる。

「ちょっと名前…大丈夫?」
「〜〜勘弁してったら…」

「歓迎のお言葉ありがとうございます。
……皆さんの幸せな笑顔が私を見上げているのはステキですわ。皆さんとはよいお友達になれることでしょう」

「「だろうね、」」

アンブリッジへ向き直りフレッドジョージが小声を揃える。名前は彼らが自分を見ていたとはつゆ知らず、口を塞ぐように見せ鼻を塞いで、手のなかで大きく口呼吸をしながら、アンブリッジに視線をやった。

「魔法省は常に、若い魔法使いの教育を重要視してきました。歴代校長は歴史あるこの学校に新風を吹き込みましたが……進歩のための進歩は奨励すべきではありません。保持すべきものは保持し、…

正すべきものは正し、」

「……、…」

「禁ずべきと分かったものは、切り捨てていきましょう」

名前は後半、彼女と視線が交わっているように感じられ、まるで言い聞かせられている気分で、口と鼻にやった手はそのまま、硬直してしまった。戸惑いながら包まれた拍手の音に、慌てて気を確かにした。

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