09



大広間から各寮を目指す賑やかな道中に、二人はまた名前のもとへやってきた。

「魔法使いさんは杖で弾く音と聞き間違えていたのね」
「でかしたよ名前!あれなんだったと思う?ホグワーツの地図と全員の居場所だった!」
「後で中も見せてやるよ!足跡が動くんだ。名前と一緒に!名前が居なけりゃ解けなかった!」

左右から興奮冷めやらぬ様子で話す二人が面白く、謎が解けた達成感もあって名前は思わず笑ってしまう。全員の居場所が分かるのなら誰も居ないのを見計らって閲覧禁止の棚へ行きたいと夢を語ると、あんな所にかと、二人の興奮が一瞬落ち着いた。

「ところであんな凄いもの、どこで手に入れたの?」
「フィルチの書類棚。爆弾で怒られて連れてかれたついでにその…〜」
「"失敬"?」
「お。それだ」

名前にニヤ、と返すフレッド。名前は"爆弾で"という箇所に触れることはしないでいるとジョージが続けた。

「没収品。特に危険。の棚があったんだ。何もせずに居られる?」
「二人には無理ね。」
「「はっ。名前にも無理だ」」

「なにがそんなに危険なんだろ。居場所が知られて危ないときなんてある?」

呆気に取られた二人は立ち止まりツカツカ歩き続ける名前の背中を見つめる。居場所が知られちゃ困るタイミングなんて"その"常習犯である二人にはいつだってあった。
(これがハッフルパフ生との差か?)
(だけど俺達にはあの子しかいない)
言葉にせずに鏡のように同様の表情で意思疎通すると、二人は名前に追いつくように急いだ。

……――

名前が地図の協力のお礼に選んだのは、帰りの汽車でいっしょに座るという、フレッドとジョージには容易すぎるものだった。一年生の終わり、第一印象からは想像もつかないほど三人の仲は深まり、名前は共犯とはならずとも、協力や助言はした悪戯の数も増えてきた。名前ちゃんは俺たちと帰りたいのかぁ、しょうがないなぁなど散々言われたが、名前は二人と居て楽しいのと他に、ハッフルパフの友人は4人組で居ることが多く、一緒に座れず席の確保に困ることを避けられる手段でもあった。汽笛後まもなく、また元気で会おうと景気づけに、三人でお菓子を広げる。

「クィディッチに出られたらなぁ。俺とジョージでうまくやれると思うんだ」
「きっと選手になれるよ。二人とも上手だもの」
「下手なふりまで上手な名前が言うなら、間違いないな」
「クィディッチは楽しいけどちょっと心配。あんな鉄球が二人に飛んでくるかと思うと…」
「ハッフルパフの席にハイタッチしに来てやるよ!」
「あぁ、もっと楽しくなる!両手を伸ばすんだぞ、フレッドと同時だからな」

二人と話す汽車での時間は、行きに一人で来た時よりかなり短く感じたが、夏はこっちでドライブしようだとか、兄弟がたくさん居て賑やかだとか、二人の話は体感時間の割にはたくさん聞くことができた。行けたらねと軽く流したが、名前のところでも車は飛ぶんだろ?とふと聞かれて初めて、空のドライブの予定だったのかと少しひやりとした。

「チョコ味」
「俺はストロベリー。」
「…鼻くそ味だ………」

お菓子のフィナーレには百味ビーンズで小さな乾杯を交わし、ジョージの歪む表情に涙が出るほど笑った。笑えば笑うほど別れるのが寂しく、名前は心残りのないよう、汽車が停まるまでの道を楽しんだ。



二年生を迎え、フレッドとジョージは夢を実現させクィディッチの選手に加わり、人間ブラッジャーと名高いビーターになることが出来た。もちろん名前はああは言ったが、人づてに知ってすぐに二人の元へ駆けつけ、自分のことのように喜んた。
もちろん試合開始前、二人はパフォーマンスのように大きなカーブを描いて、ハッフルパフ席の名前とハイタッチを交わした。

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