怪しいものではありません


「着替えありがとうございます。あ、すぐ出るので!」
「おう、見張ってるからゆっくりでも構わねぇよい」
そういって、柔らかく笑いながら壁にもたれて、本を広げる。

「バスルームっていうか、銭湯だなぁ」
バスルームに入ると大浴場が広がっていた。いつもはクルーの皆で入ったりするんだろうか。

(一人だけで入っちゃって、申し訳ないな)
蛇口をひねると、温かいお湯が出てきた。
(真水って、きっと貴重だよね・・・)
船のシステム自体はよくわからないが、貴重なものだということはわかる。
そう考えると、なおさら一人で入らせてくれたことがありがたい。

備え付けのシャンプーとせっけんで体を洗い、バスルームから出る。
「着替え・・・着れるかな」
マルコさんはかなりの高身長であり、私は平均よりも低めなので少し心配であった。

体を拭いて見てみると、Tシャツとカッターシャツと、短パン。
少し大きめであるが調節すれば着られそうだ。わざわざ選んでくれたのだろうか。

「・・・ちょっとエロ、いや大人っぽくなっちゃうけどこれでいいか」
シャツはどちらも男物であるためか、胸のあたりが大きく空いてしまう。
袖をまくり、短パンはウエストを調節すればそこまでおかしくはないはずだ。

濡れた髪を高い位置でポニーテールにし、バスルームを出る。

「マルコさんっ!お待たせしました!」
「おーう、早かっ・・・」

マルコさんが読んでいた本から目を上げ、こちらへと目を向ける。・・・そのまま固まってしまった。

(あちゃー、やっぱりおかしかったかな)
「すみません、私小柄なのでこういう着方しかできなくて。着てた服洗って乾かしたらちゃんと着るので・・・」
「あ、あー・・・いいよい。それよりやっぱり大きかったなぁ。ごめんよい」
「いえいえ!貸してくれて本当ありがたいです!これさえなかったら、タオル巻いて過ごすしかなかったので!」
あははーと笑いながら冗談を言う。
「タオル・・・巻く・・・」
「あ、下品でしたね。もちろんそんなことしませんよ?!」
「ん、あぁ・・・そうかよい」

なんかさっきからマルコさんの口数が減った気がする。あと顔を見てくれないような・・・。

「マルコさん?」
「あ、いやなんでもないよい。それより着替えは次から別のやつを貸すよい」
「?はい。」
「***、さっき飲み物も飲めなかったし、腹も減ってるだろうよい。紹介ついでに食堂に行くよい」
「わかりました!少し緊張します・・・私が行っても皆さん気を悪くしないでしょうか」
「そんなやつらじゃないから大丈夫だよい。」

二人並んで歩き始める。そういえばさっき気づいたけど、マルコさんは本を読む時は眼鏡をかけるんだな。
最初は緊張で顔をあんまり見れなかったけど、筋肉質だよなぁ。シャツの前開けてるけど、みんなそうなのかな。というか身長高いなぁ。そんなことを考えながら、マルコさんをじっくり見てしまう。

「***、顔見すぎだよい。首痛くなるだろい」
くくっと笑いかけられる。
「えーと、マルコさんほど高い人あまり見たことがないので・・・珍しくて」
「そうかよい?俺は平均的だと思うんだが。***からみたら、そうかもしれないよい」
「ちょ!チビっていいたいんですかっ!」
「そうじゃなくて、小柄でかわいいってことだよい」

さらっと褒めるもんだから、つい頬が赤くなってしまう。

「あ、ありがとうございます・・・?」
「さて。食堂ついたよい」


(みなさん、初めまして)
(決して怪しいものではありません)








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