マルコさんが出て行った扉を開け、部屋の外に出る。熱い日差しが目に痛い。
たしか記憶では白ひげ海賊団って、1000人近い大所帯だったはず。だから、そのあたりに人がいるかと思ったんだけど、そんなことはなくて。
(だ、誰もいない・・・)
周りに誰もいなくて、不安が増す。でも好都合だ。歩いて回ろう。夢の中でさえ、人とすれ違って気を使いたくないし
(しかも、今男性とすれ違うのはちょっとね)
助けられた時にタオルを一枚かしてもらい、ある程度髪拭いたものの、それでもまだ服は濡れている。そのため、足早に歩き回る。と、その時。
ごちんっ
「いった!」
周りをキョロキョロしすぎたせいか、目の前の柱に気づかずに、おでこをぶつけてしまった。不意打ちすぎて、かなり痛くてうずくまる。少し涙が出た。
「夢なのに、痛い!そういうのはいらないのに!」
「***?!どうしたんだよい?!」
後ろからマルコさんの声。
(やべ、ばれちゃった)
湯気が出ているマグカップを片手に持ったマルコさんが、駆け寄ってきて、顔を覗き込んでくる。おそらく涙を溜めているのをみて、驚いているようだ。
「すまねぇ、事情あるのに一人にさせちまって不安だったよねい。」
・・・また勘違いされた。少し、罪悪感を感じた。冒険とかいってごめんなさい。
「いえ・・・あの、それよりもシャワーを借りたくて、部屋でちゃいましたすみません。」
「いいんだよい。そうだな、女だからそのままじゃ気持ち悪かったねい・・・先に案内するよい」
「ありがとうございます」
バスルームへ案内してもらう。やはりこの海賊船はかなり広いようだ。
かなりの距離を歩いている。しかし、人とすれ違わない。
「あの、さっきから誰ともすれ違いませんけど、たしか助けられた時たくさんの声が聞こえたような・・・」
「あぁ、医務室の周り人払いしてるんだよい。騒がしいと休めないだろい」
そんな気を遣ってくれていたとは・・・。もう勝手な行動はしないと誓います、ごめんなさい。
「元気になったら紹介するよい。うるせー奴らばっかりだけど、仲間だから安心しろよい」
「楽しみにしています!」
それからバスルームにつくまで、マルコさんと話していた。財布に入っていた身分証の文字が日本語だったから、イゾウさんという方に読んでもらったとか、***を見つけたのは見張りをしていたエースさんだとか。
海から助けてくれたのはマルコさんらしい。不死鳥になって、引き揚げたとのこと。
(たしか、悪魔の実の能力者だよね)
具体的にどんな能力かはあんまり知らないけど・・・
「空が飛べるのはとても素敵ですね。おかげで命拾いしましたー」
「そうかよい。・・・あんまり空は飛びたくないんだがよい」
「え?なんでですか」
「ほら、バスルームついたよい、あと俺の服で悪ぃんだが・・・一旦これ着ろい」
答えを聞く前についてしまった。ちょっと気になるけど、また後でいいか。
「ありがとうございます!着替えないんですごく助かります・・・」
「ここで待ってるから、ゆっくり入るとよい。」
「え・・・いや、さっきの部屋で待って頂いて大丈夫ですよ?」
「道覚えたかい?」
「すみません・・・お願いします」
「素直が一番だよい。迷惑とか考えなくていいんだよい。この船に乗った時点で、***は仲間だからねい」
仲間。
その言葉に心が温かくなる
あぁ、私以外と不安だったのかな
すみません、少しだけ甘えさせてもらいます。
(仲間と呼んでくれて)
(ようやく、笑えたかも)