私に仕事を3


「まだ、朝日も出てないんだ…」

昨日はお昼から夜にかけてたくさん寝たこともあって、2回目の睡眠は短くてすんだ。まだ朝夜は肌寒い季節のため、マルコさんのジャケットをお借りして、部屋の外に出る。まだ外は薄暗くもう少ししたら、日も昇るだろう。出る時に見たところ、マルコさんはまだぐっすり眠っているようだ。昨日の記憶を頼りにバスルームに向かい、顔を洗う。
(よし、疲れも吹き飛んだし、今日は何をしようかな)
廊下を歩きながら、自分が何をやれるか考えてみた。今まで部活、学校生活、仕事と一般的なことしか行ってこず、こういう時のために何か資格があればな、と切に思う。
(うーん、事務作業とあとは掃除、あとはキッチンの雑用くらいなら出来るかな)
この船のクルーは多いので、皮剥きや食器洗いだけでもかなりの手間だと思った。コックさんはサッチさん以外でも複数いたようだが、いて困ることはないだろう。
(看護師だったら、マルコさんのお手伝いも出来たかなぁ)
いや、確か漫画では白ひげにはナースがついていたはず。だから、ナースはもう必要ないか。残念。そんなことを考えながら歩いていたら、一番端の甲板に出た。

「うわぁ…!」
ちょうど水平線に太陽が昇っていた。海は凪いて、とても穏やかだ。…本当に私はワンピースの世界にトリップしたのかと思うほど、景色は綺麗で、太陽の光が海に反射に輝いていた。この海の上には空島があり、この海の底には魚人島がある。ワンピースはそんな世界なのに、こんな穏やかで平和な1日もあるんだと驚いてもいた。…私はこの世界で何ができるだろうか。きっと、この朝は私の記憶にずっと残るだろうと、そう思った。

部屋に戻ろうとした時、上から電々虫の着信音が聞こえた。
『ぷるぷるぷる』
見張り台だろうか。真ん中あたりから聞こえる。
その音を聞き、バタバタと急いで電話を取ったようだ。
『はいもしもし!なんだ!こんな早くから!』
眠そうな声でそう応答する。こちらからは高くて見えないが、周りが静かなので、相手の声も含めて聞こえて来る。
「私、貴金属買取の商船をやっております、マネージャブンと申します!まだそちらの船は見えておりませんが、眠っている宝石などはありませんでしょうか?!一般で売り買いされる2倍で買い取らせて頂きます!ただし手付金として50万ベリーが必要になりますが、必ず!その金額以上で宝石やお宝を買い取らせて頂きます!』

…うーわ。わかりやすいほどの詐欺だな。今時の日本の詐欺グループでももっと設定練ってくるよ。面白いなあ。
『えっほんとか?!?それは隊長に報告して…』

ちょっとまって、まってまって

『そうですかそうですか!ちなみに今おいくらほど準備できますか?実は他の船でも買取希望が出ていまして、早い方に決めてしまうかと』

『ちょっとまってくれよ!!な、なんとかするから…た、、マルコ隊長ーーー!!』
そういって急いで階段を降りる音がし、マルコさんの部屋へと向かっていった。

これはダメだ。ごめんなさい、クルーAさん。あなた騙されてます。
階段を登り、電話を取る。
「もしもしお電話代わりました。責任者の、あー…マルコと申します。」
『おっと失礼女性でしたか。先程の方にも説明いたしましたが、私どもは』
「聞いておりました。とても良いお話ですね。なんでも買取2倍だとか。しかし私達の船は海賊船なのですが、それをご存知ですか?」
『か、海賊…』
電話越しに少し怯むのが分かる。
『そ、そうでしたか。いえ!海賊様でも大切なお客様ですので、精一杯やらせて頂きます!今なら買取2.5倍に出来ますが…ただ100万ベリーになります!すぐにご準備頂ければ!」
だらだらと相手が話してる間に、後ろで大勢が階段を登る音がする。おそらく先程のクルーが隊長格を呼んだのだろう。

そして詐欺野郎は海賊と知って怯むどころか引っ掛けてきた。完全に馬鹿にしているんだろう。
「そうですか。100万ベリーですね。すぐに用意します。」
その返答をきいて、後ろがざわつく。先程のクルーが声を荒げる。
「お、おい!なに勝手に」
「すみません、すぐ終わるので、待ってもらってもいいですか?大丈夫です。お世話になってるので、この船に損はさせません。」
それでもクルーは私から電話を取ろうとするため、小声で
「マルコさん、信用してください」
とマルコさん見て伝えた。
マルコさんはなにも言わずクルーを制止してくれた。
「あ、すみません。今金庫の確認をしていました。お金はあるのですが、このお金はとても大切な人に献上するためのものなので、出来ればその人にもオススメしたいのですが。」
『わかりました!お仲間でしょうか?!大歓迎ですよ!』
そうですか〜よかったです。いや海軍にあげるお金なもんで、騙し取られるか心配で!私この船七武海も乗っているので、海軍とは深い中なんですよ!」
『か、海軍ですか』
「はい、七武海の一人が仲間にいるので、海軍の大将の一人と仲良くさせてもらっています。だから誘うのは大将なんですけど。正規のお店では絶対着かない買取価格ですよねー!あ、そうなると、おそらく身分証とか準備した上で海軍本部に私と一緒にいくことになるかと、」
がちゃ

切れてしまった。…ちょっと楽しくなってきてたのにな。
我ながら学生時代いろんなバイトしていてよかったと、心から思った。
隊長格がそろっているのに関わらず、とても静かな後ろを振り返る。
「すみません、詐欺だったのがわかってたので、撃退しました。さっき電話越しで相手も聞いてたので、"損はさせません"と言いましたが、期待させてしまって申し訳ないです。ただ、あのままじゃ100万ベリー騙して取られちゃってたから、」
電話が終わって、誰も声を発さなかった。なので精一杯怒られないように一気に喋る。そして頭を下げる。
やはり間違っていただろうか…海賊なんだから50万100万如きではくれてやれ、的な。沈黙が怖い。
「あんな、顔を上げろい」
マルコさんからの返答に顔を上げる。
その瞬間、
マルコさんに強く抱きしめられた。
「マ、マルコさん…?!」
「よくやったよい!!!!」
「え、」
「***すげえなー、その喋り方、役に立つことあるんだなー!!」
エースさんからも褒められる。
「この船以外と金ないからなー、今の金出してたら大損だったわけか。さっきのやつから呼ばれてよー、隊長格の金庫集めて50万ベリー準備してたんだぜー」
と、まだ髪をセットしていないサッチさん。
「本当にありがとよい!***のおかげで騙されずにすんだよい」
「え、でもあの手の電話はよくかかってくるでしょう?」
「基本電話はねーな。海賊だから、大体船に乗り込んで奪うまでだ」
「エースさんお宝興味なさそうなのに…」
「高いとか安いとかじゃなくて、カッケーやつだけが好きなんだ!って、マルコそろそろ***離してやれよな」
そういえばマルコさんに抱きしめられたままだった。
「…っすまんよい。つい」
「いえ、お役に立ててよかったです。」
ほっと胸を撫で下ろす。結果オーライだ。

「そうだよい!***は電話係がいいよい。交渉とかうまそうだしな」
「あ、そうですね。前働いてたことはあるので。」
「じゃあ頼むよい。」

「ちなみに、俺よく仕組みわかんねーけど、あのままだとどう騙されてたんだ?」
「おそらく一旦少量の貴金属見積もって、最初は2.5倍で買い取って信頼させて、前金受け取ってトンズラってとこですかね」
「あー、そういうことね。俺全然頭まわんなかったよー」
「朝早くにかけてきたのもポイントですね、寝起きは頭がボーッとしますから。」
「俺、はじめて***がカッコよく見えた。」
「さっきからエースは失礼です。」
「オメーも宝は似合わないとかいってたじゃねーかよ。てかさんはどうした。」
「年下で失礼なことばっかりいうから、エースはいいです。もう」
「まぁ、最初から呼び捨てにしろっていってたしな!まぁいいか!」

こうして、私の仕事が決まりました。


(***、俺は)
(あ、すみませんマルコさん、なんでした?)
(…よい。)





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