私に仕事を2


昨夜、結局マルコさんの部屋で朝まで過ごしてしまった。この言い方だと勘違いされるかもしれないが、もちろんベッドは別だ。というよりも、マルコさんが先に寝てしまい・・・

・・・

私が起きてから、マルコさんはまだ仕事をしており眼鏡をかけ、作業をしていた。
「あのマルコさん手伝いますよ。」
「お、そうかよい。じゃあ俺はソファーで作業するから、書きもん変わってくれよい」
「わかりました・・・やっぱり、全部手書きですよね・・・」
「・・・手以外でどう書くんだよい?」
「いえ、ガンバリマス。どう書くか教えてください」
「おう。これは先日の食料の買った時の金額と使用した分の内訳なんだが・・・」
私はベッドから下りて机に向かう。マルコさんは私の横に立ち、自分で書いた書類を見せてくれながら、教えてくれる。
「ここをこう書くと、わかりやすいよい。あーこの資料はもっとわかりやすいのが確かこのあたりに・・・」
そういって、机の奥の方に立てかけてある本に手を伸ばす。部屋に入ってきた時には乱雑と思っていた机の上だったが、それは書類が山積みになっていたかららしい。奥に立てかけてある本や資料集などはきちんと整理されていた。と、その瞬間、ふわりと強い石鹸の香り。
(あ、この香り。ジャケットの・・・)
お風呂上りの香りだ。やはり石鹸と柑橘系が混ざったような香りがする。

「マルコさん、いい香りですね」
「・・・おう。風呂、さっき上がったばっかりだよい」
そういって資料を手に取り、パラパラとめくり中を確認する。
「なにか特別な石鹸ですか?ジャケットからも同じ香りがしたんですけど、お風呂のとは違う気がします。」
「・・・***はあいつらとは違って、よく鼻が利くよい。俺は能力者だから、潮風でも若干力が落ちるんだよい。だから、この前の島で手に入れた海水をあまり寄せない石鹸を買ったんだよい。おそらくそれだろうな」
「そうなんですか。とってもいい香りですね。その香り、私好きです」
「・・・っ」
マルコさんが資料を開いたまま、ソファに移動する。机からソファまでは少し離れているため、光が当たらず、顔が見えない。
「マルコさん?」
「あ、あー‥さっきのわかりやすい資料みつかったら教えるよい。それまではさっきの作業をよろしく頼むよい」
「わかりました、そっち暗くないですか?二人で並んで作業したほうが」
「いや、それは、勘弁してくれよい・・・。こっちにはライトあるから心配しなくても大丈夫だよい」
「??はーい。じゃあ作業します!」
二つのライトに照らされながら、お互いに作業を進める。いつもは基本パソコンだから、手書きには慣れず、時間がかかってしまう。でもお世話になってるし、慣れなきゃな。

資料の半分ほど終わった頃、一旦マルコさんに報告をすることにした。
「マルコさんこれってどのくらいやれば・・・」
後ろを振り返ると、手に資料を持ったままマルコさんが寝ていた。
(寝てる・・・そうだよね、こんな深夜だもんね)
近づき、顔を覗く。
起こすのはさすがに申し訳なかったので、資料を手から取る。眼鏡も外そうと手に取った時、右手を掴まれた。

「・・・すみません、起こしちゃいましたね」
「・・・すまん、ちーっと寝てたよい。あぁ、眼鏡」
「寝辛いから、取ろうかと思って」
覚醒したわけではなく、眼鏡を取ろうとした時に起きたようだ。目が薄く開いている。
「ありがとよい。***は、優しいな・・・このままだと俺、まずいかもしれないよい・・・」
まずいとはなんだろうか。仕事を取られるなどと話だろうか。
「こちらこそ、お世話になってますから。」
その返事を聞くやいなや、マルコさんの目が再び閉じる。
「…今日は、ここで寝ろよい」
その言葉を最後にして、今度は本格的に寝てしまった。
「・・・いいのかな」
一旦眼鏡を机の上に置き、座りっぱなしだったマルコさんをソファに横にして、ベッドのタオルケット一枚かけた。申し訳ないけど、タオルケットはもうないし、マルコさんのジャケットを借りて寝ようかな。

私は資料を簡単に整理し再び、ベッドで眠りについた。

(さっき掴まれた右手が、まだ温かかった)









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