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月に一、二回街に下りて、里の外部の人達と触れ合う内に早苗は世間が様変わりしたことに驚くようになる。
それ程、一つの場所に留まると知識も情報も古びたものになっていく。
同時に、早苗は学校を中退したようなものなので独学で手習いをしなければならなかった。

鉄珍に言えば買い与えてくれるが、次第に申し訳なく思った早苗はある日小遣い稼ぎをしようと思い立つ。
出張の包丁研ぎと称して、街の一角で商いのようなものをするようになった。
そうすれば、溜まった金銭で書物や新聞、さらに鉛筆や紙などを買うことが出来る。

ある日、旅装束に身を包んだ鋼鐵塚が脈絡もなく遠出をするから着いてこいと言ってきた。
背には布に包まれた箱を背負っている。

「めちゃくちゃ唐突…。一体どこへ?」
「いいから黙って着いてこいってんだよ」

鋼鐵塚の調子に狂わせられながら、早苗は急ぎ自らも旅装束を身に纏い、里から出立する。
ひょっとこの面に、笠を被ることも忘れずに。

一山越えて谷越えて、また山越えて…と繰り返し
、途中休憩を挟みながら、早苗達はある山の麓に辿り着いた。
よく知った道であるのか、ひたすら歩みを進める鋼鐵塚の後に続く早苗は、やがてある一軒の木造の小屋に目を止める。

「おおーい、鱗滝ー!いるかー!」

ドンドンと遠慮なく、小屋の戸口を叩く鋼鐵塚。すると、すぐ家主が戸口を開けて現れた。
家主は水色の羽織を纏い、顔は天狗の面で隠している。

「…」
「よぅ、いるじゃねぇか。手紙読んだか?」
「…ああ」

家主は鋼鐵塚と二言交わすと、鋼鐵塚のその後ろにいた早苗に声を掛ける。

「その子が鉄明か」
「そうとも。じゃあ後は頼まァ」
「…え?あ、ちょっと!?」

ひらひらと手を振り、元来た道を戻る鋼鐵塚に呆気にとられている早苗に、鱗滝と先程呼ばれていた家主は何も聞いていないのかと尋ねてきた。

「…いえ、何も。十日程前に里から出てきた時も、何の説明もせずに着いてこいとだけでしたよ」
「…お主も苦労しているな、あの男に」
「はい…」

後から聞くと、鋼鐵塚は鬼殺隊隊士に刀を届ける為に一週間ほど里を留守にする間、親睦の深い間柄の鱗滝の元に早苗を預ける旨を事前に頼んでいたらしい。

「それから、刀の取り扱いの初歩を学んで欲しいそうだ」
「…よろしくお願いします!」

どんなことを教えてくれるのだろうかと逸る気持ちを抑えながら、明日を待ちわびて就寝する早苗だった。


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