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刀鍛冶の里は、人里離れた山のさらに山奥に存在しているとされている。
「されている」という曖昧な表現になるのは、鬼に場所を特定される事を避ける為だ。

鬼殺隊隊士が刀剣の修繕でこの里を訪れる時は、前もって彼らの長である耀哉に申請をしなければならない。
そして早苗が最初に訪れた時と同様に、数人の隠の引率でやっとこの里に訪れることが出来るのだ。

友と呼ぶ仲になった杏寿郎の手紙は、季節が変わる毎に送られてくるようになった。
唯一無二の情報手段である鎹鴉を先述の事情で、頻繁に出す事も出来ないので仕方のない事だが、彼から便りが来ると嬉しい気持ちになるのと同時に寂しい気持ちになる早苗だった。

そんな心情を悟られまいと、早苗はいつも通り自分の身辺に起きた事を何気ない調子で記し、最後にまた再び会える事を楽しみにしていると決まって結ぶ。

『生きていればまた会える。早苗と再会する事を楽しみに、俺は任務に励むぞ』

杏寿郎が里を発つ前に残した言葉を、早苗は一日を迎える度に思い出す。

***

表向きに"鉄明"と名乗り、男装をするようになった早苗は一段と目を引く存在となる。

「…お前さんのやること、成すことにどう言えばいいのか儂は分からんわ」
「…鬼というのは元々は人間だったという話を聞いて、ますます刀鍛冶に携わりたくなったのです。生半可な気持ちではない事をご理解いただきたく存じます。

曾お爺様が信用を失くされたのは当然です。
曾孫である私も同じ事をするのではないかと思われるのも、無理はない事です。

ですから、刀鍛冶というものに対して責任もって取り掛かりたいので、女である身分を捨てます。」

早苗の気持ちを受け止めながらも、どうしてこうも自分の周りは厄介な子達が集まるんだろう…と鉄珍は溜息をついた。厄介であればある程、愛おしく思うのだけども。

「…うんうん。お前さんの気持ちはよう分かった。今日はもう遅いから寝なさい。

明日は久しぶりに鬼狩り様がいらっしゃる。粗相がないようにせんと…」
「え?どなたですか」

思わず身を乗り出した早苗に遠い目をしながら、鉄珍は胡蝶カナエ様だと一言述べる。






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