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上座に腰かけた"お館様"は、両隣に2人の子供を控えさせていた。

「体調の方はどう?早苗…」
「…はい。胡蝶カナエ様、しのぶ様のお陰で以前のような調子に戻りつつあります。」
「それはよかった」

早苗の返答に笑みを浮かべると、"お館様"は表情を一変させる。

「早苗の今後のことについて相談しよう。

まず初めに、私は産屋敷耀哉。
君と対峙したような鬼を葬ることに特化した集団、"鬼殺隊"の責任者です。

君が命からがら鬼から生き延びられたこと、君を助け出したことは私と私が子供たちの誇りなんだ」
「…」
「君のお母上を守ることが出来なかったのは悔しく思う。

"稀血"という鬼の能力を引き上げるような体質を持っていた彼女に、一目散に狙うのも鬼の性質なんだよ」
「…そうなんですか…。」

耀哉から説明を受けるものの、早苗は別次元の話に頭が追いつかない。
"鬼"という化物にそれを退治する集団がいるだなんて、世間的に話題に上がったことがない。
そして母が鬼に狙われるような体質を持っていたと事実を知った今、殺された母の無念さに早苗の心は張り裂けるような悲しみを寄せた。

「…」
「混乱しているよね。受け入れしにくい話なのは分かるよ。

だけど、君はこうして生き残ったのだと理解して欲しい。そして鬼というものがこの世から消え失せるまで、君とお母上のように悲しむ人達を私達が救い出しているということを忘れないで欲しい」

耀哉の言葉はどうしてだか、早苗の心を揺さぶる。風に乗って鼓膜に届く彼の声はせせらぎのようだ。

「君のこれからの生き方について、私と相談しあって決めよう。

まず第一候補には鬼殺隊に入隊するか。ここにいる胡蝶カナエ・しのぶの姉妹も、鬼に両親を殺されたから決意して入隊した。
第二に、藤の香袋を所帯していつも通りの生活に戻るか。

…後は、早苗はどうしたいか。」
「…私は…」

耀哉の言葉に促され、早苗はこれからの己の身の振り方を熟考しなければならなかった。
鬼に殺された母を思えば彼女の菩提を弔うことを第一としたいし、一般社会に戻って誰かと結婚して家庭を持つのが母が娘に託した望みだろう。
…だけども、一度鬼が実在するという事実を知れば元通りの生活に完全に戻れやしない。
悲劇から生き延びた早苗は、これからもふとした瞬間に罪悪感や後悔の念に苛まれることになるだろう。

頭の中でぐるぐると駆け巡った考えは、齢11の早苗にとっては重苦しいものだった。

「…ひとまず家に帰らせて下さい。父と相談してみます」



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