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第4廻 その娘、異端





1990年 某日



「こんな所にいたんだ。探したよ」

「?」



学校をさぼって一人、森へと来ていた螢に声をかける姿あり。
声の主を見てみれば、幼い少年が一人。



「僕がわからないかい?」

「………ハオ!そのマント、もしかして…!」

「ふふ…どっちも正解。会いにきたよ、“姉さん” 。まっ、血は繋がってないみたいだけどね?」

「!」

「なんで知ってるの、か」



螢の隣に座り、ハオは空を見上げる。
特になにも聞かず、言わず。二人は黙って空を見上げていた。



「───螢の心は静かだね」

「心が読めるの?」

「そうだよ。いやな力だ」



あぁ、この子はずっと傷付いてるんだ


まるで自分自身のことのように胸を痛め、ハオをそっと抱き締める。
その声にも、行動にも、そこにあるのは優しさと愛情だけ。



「辛い時は、泣いていいんだよ」

「は…?僕のこと、怖くないのかい…?」

「怖いわけないでしょ」



その心は強く、暖かく。今まで感じたことのない魂で。
懐かしいヒトの魂に、どこまでも似ていた。



「ふふ…じゃあ “弟” に戻って、甘えようかな」

「もちろん!」



誰にも見せたことのない弱さで縋るように。
己を抱き締める腕に甘え、身体を預ける。

初めて、居心地がいいと思った。
どこまでも優しく穏やかで暖かいヒト。



「…寝ちゃいそうだな」

「寝てもいいよ?まだ5歳なんだし、普通だと思うけど」

「ふっ、くく…本当に面白いね、螢は」

「なんでさ」

「なんでもない。そろそろ行くよ」

「え、もう!?」

「…また会いにくるよ。でも、会ってることは」

「ナイショ、でしょ? 葉王のことは知ってる。ハオは、知ってるってことを知ってるんだよね」

「………」

「それでも私は構わないよ。お姉ちゃんですから」

「…じゃあね」

「うん。いってらっしゃい」



あの時と同じだ
5年前、自身を見送った屈託のない笑みと


S.O.Fと共に、姿を消す。
残された螢は、静かに空を見上げる。



「…今回こそ」




まだ、誰も知らないのだ。
それは星の王さえも。





誰にも負けることのない愛情は、そこにあって。
魂だけが知っている。何度消えようとも、消えぬ想い。








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