少女と海賊と海軍と


「お前何歳だ?」
「先月16になりました」


思いの外若い年齢に、男は驚いた。


「若すぎる、ですか」
「、あぁ」
「何かを始める時、速すぎるということはない。しかし、それ相応の準備と覚悟がいる。準備を怠れば思わぬモノに足を掬われ、覚悟がなければ扉は開けない」


握っていたフォークを男に向け、ニヤリと口角を上げた。そこに先程の妖艶さはなく、ただ真っ直ぐに此方を見極める紅い瞳があった。それは人の汚さを知る人間の目だ。
15という若さで既に整った容姿と妖艶さ、大の男を制圧する実力と人を見極める瞳。それを持つこいつが欲しい。


「準備はお済みですか?ハートの海賊団船長、トラファルガー・ロー様」


何より、コイツは自分を飽きさせない。


「、あぁ。……だが、1つ欲しいモノがある。お前は頼んだら揃えてくれんのか?」
「ご冗談を。ここは何でも屋ではありません。オーダーメイド服専門店Luna、分不相応のことはしない主義なんです」
「そうか」


羚の返答に、愉しげに笑うロー。
その時、店先のベルがなった。
入ってきたのは青と白の制服に、正義と書かれたマントを着た男1人と、その部下らしき数人の男達だった。


「やぁ、レイ。休日にとんだ災難だね」
「全くだよ、アルト。海軍は何をやってるわけ?これじゃあ職務怠慢だよ」
「君はいつでも僕らに手厳しいな。ーーそちらは?」
「私の大事な“お客様”」


クスクスと、何処か相手を馬鹿にした笑い声を含んだ会話。いつものことなのか、相手の男は気にもとめていない。


「ロー様、もう一杯どうですか?」
「あぁ、貰う」
「僕にもコーヒーをくれるかい?」
「冗談言わないでくれる。休日に何故働かなければならないの?」
「酷いな」
「彼は海賊、貴方は海軍。それとも何?海軍は休みの一般人の店に来て一服するのが当たり前か?」
「君が一般人という玉かい」


部下達が倒れている男達を縛り上げる傍ら、上司であるはずのマントを着た男アルトはローの隣に座って呑気に会話を続ける。
海軍と海賊が同じ空間にいるだけで異質であるのに、少女に詰られるという異様な光景が広がっていた。
アルトはローを捕まえる素振りを見せず、ローも戦う素振りも動く素振りすら見せない。


「アルト少将、連行の準備が整いました」
「了解。じゃ、レイまたね」


暫くして敬礼をしながら告げた部下に答え、アルトは何とも軽く店を出ていった。

2013,04,02

*prevbookmarknext#]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -