彼は不敵な顔で宣った


再び2人だけになった店内。ローは朝食の後片付けに勤しむ羚を眺めていた。


「そう言えば、お前能力者か?」


不意な質問に顔を上げ、彼女は緩く微笑う。
ローは口端を吊り上げ、愉しげにクツクツと喉を鳴らした。3杯目のコーヒーも少なくなってきた頃のこと。


「そろそろ帰った方が良いんじゃないですか?」
「あ″?」
「船の皆さんが心配しているのではないかと」
「……」


にこりと笑って帰途を促す羚に、ローは僅かに眉をしかめる。しかし、すぐにため息を吐き、残り少ないコーヒーを飲み干して立ち上がる。
羚は見送るためカウンターから出て、扉の前にいたローのもとへと近寄る。


「…1つ頼みたいことがある」
「何ですか?」
「つなぎが欲しい」
「分かりました。採寸をするので、後日またご来店下さい」
「分かった」
「それと、来る時は表の階段を上って2階のアトリエの方にいらして下さい。あくまでも、定休日ですので、ここは開いてません」


そう言った羚を何を思ったのか、ローはジッと見つめた。そして、フッと彼にしては今まで見たことがない程優しい目で笑った。
ぽかんとそれを見ていると、急に腕を引かれ視界が歪む。利那、目の前には彼の端整な顔が視界いっぱいに広がり、唇には柔らかい感触が。驚愕して目を瞠りローを見ると、彼は目を細めて笑った。紅茶色の瞳が、琥珀色の瞳を睨み付けた。
現状を理解して離れようとするが、所詮男と女。力では敵わない。いつの間にか腰に回っていた彼の左手と、後頭部を押さえ付けている右手に身動きできない。
次第に息が苦しくなり、僅かに口を開けるとすかさず彼の舌が入り込み舌を絡めとられる。


「ふぅ…、やっぁ!」


思わず声が洩れ、体から力が抜けていく。ローの服を握り、どうにか立っていた。


「は、!……はぁ…は、…っん」


ようやく唇が離れ、力が入らずクタリとローに体を預けてしまう。
怒りからか羞恥からか、羚の顔は朱で染められている。


「何っするん、ですか!」
「…悪いな。海賊は欲しいモノは奪うんだよ」


その言葉に表情を引きつらせる羚にローは不敵な顔で宣った。


「俺はお前を奪い、喰らってやる」


羚の胸をトンッと指差して、ローは店を出ていく。ベルが静かに店内に鳴った。

2013,04,03

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