彼女の実力


「お帰り下さい。あなた方のような人達は、この島にも私の仕事にも邪魔です。だいたい、表の札が読めませんでしたか?『営業時間a.m.10時〜p.m.11時まで』
……あぁ、そうそう。こうも書かれていたはずです。『本日定休日』」


嘲笑を浮かべる彼女に、男達は反論しようとするが声が出ずに口を開閉するだけ。それが怒りに拍車をかけ、顔を赤く染め上げる。


「字も習わないで、よくこれまでやってこれましたねぇ。不便も多かったんじゃないですか?
ーー最後です。私の機嫌が良いうちにお帰り下さい」


散々馬鹿にした後にこりと、いっそ無邪気な笑顔を浮かべた。
とうとう、男達の堪忍袋の緒が切れた。一斉に腰の剣や銃を抜き飛び掛かる。
中々に緊迫した状況で、羚はため息を一つ吐いた。
瞬間、辺りに3発程の銃声が響く。重たい物が床に落ちる音がそれに続く。
羚の手には、いつの間にか大型の挙銃が握られていた。
銃声は3発程。しかし、それよりも多い人数の男達は制圧されていた。
倒れた男達を放置して、羚はカウンターにいた男に向き直る。


「すみません。煩かったでしょう」
「いや、構わねぇ。おかげで、良いもんが見れた」
「そうですか」


クツクツと喉の奥を鳴らして、カウンターにいた男は笑う。既に食べ終え、今はコーヒーを飲んでいる。
結局、一歩も動かずに男達を伸した彼女は、冷めてしまった朝食にため息を吐く。
そして、店にあったでんでん虫でどこかに連絡し始めた。


「もしもし、アルトはいる?…そう、また命知らずの馬鹿が来たの。……まさか、殺しちゃいないわ。持っていって欲しいの。奴に伝えてちょうだい……そう、ありがとう」


会話を終え、でんでん虫を切る。じっと自分へ向けられる視線に気付き、彼女は彼と向かい合うようにカウンター内の椅子に腰をおろした。


「何ですか?」
「何処に電話したんだ」
「お察しの通り、海軍です。何も心配ありません。貴方は私が認めたお客様ですので、彼らは貴方を捕まえません。そういう協約です」


フフ、と口元に妖艶な笑みを浮かべた紅みが強い紅茶色の瞳と、男の琥珀色の瞳がカチリと合わさった。
ゾクリと背筋を悦楽にも似た感覚が駆け抜ける。

20歳にも満たないだろう、毛色が違うだけのただの小娘。ほんの少しの好奇心。だが、今は直感的に素直にこいつが欲しいと思った。

2013,04,01

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