海の世界


羚はゆっくりと周り見回す。
どうやらまだ社の中にいるようだ。だが、先程までとの決定的な相違点があった。

潮の薫りがするのだ。

じっとしていてもどうしようもないので、羚はとりあえず社から出ることにした。
外に出ると、辺りは木々が青々と茂っていた。
薫りを頼りに歩いて行けば、真っ青な海と空が広がった。
そして、羚は唐突に理解した。

「ここ、何処…?」

言わずにはいられなかった言葉。だが、一方で理解っていた。心では受け入れられないだけ。

ここは羚がいた世界ではなかった。

* * *


羚が現実を受け入れるのは意外と早かった。

あれから数日、羚は島中を探索した。
雨風を凌げそうな洞窟を見つけ、当面の住みかにすることにした。
島中を探索して分かった事は、ここに昔人が住んでいたということ。壊された形跡の家や建物に蔦が絡まり、服や書物等は容易に手に入った。食べ物なんかは腐敗していて、食べるなんて無謀過ぎる。

あちらの世界に置いてきた、異形の友人たちから送られた大鎌 千桜-チザクラ-は、″喚べば″不自由なく手元にくる。

幸いな事に、食料には困らなそうだった。森の中には実をつけたたくさんの木があったし、壊れた家で植物・薬草図鑑なんてものも見つけたため、食べれるかどうかは分かる。
生息している動物達にも聞けば、より確かになる。

とりあえず、なんとか生きていけそうだ。

2013.3.8

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