Let's trip!!
ここは何処だ……。
その疑問は数分前に突然起ったことを思い出せば、至極当然だと思う。
数分前、羚は中学校から下校していた。季節は冬だったため、遠い空の端を残して辺りは暗闇に染まっていた。
寒さに悴む手をポケットの中で握りしめて耐える。
澄んだ空に瞬く星を見ながら、不意に視界を掠めた何かに目を奪われた。
白い猫だ。
紫と緋色のオッドアイの猫。一声鳴くと尻尾を揺らして、まるで追いて来いと言わんばかりに歩き出した。
羚は霊力と呼ばれるようなものを持っていた。そして、妖力という普通、人間は持てない力まであった。そのせいか、よく羚の周りでは不思議な事が起こった。
異形の者と話したり、遊んだり。時には怪我を治したこともあった。
今回もその類いかと思い、追いて行くこと数分。
朱塗りの鳥居が見えた。
確かあそこは海の神を奉っていたはず。
羚は首を傾げながらも、猫を追いかける。白猫は躊躇することなく、鳥居を潜り抜けてするりと扉の間を通って社の中へ入ってしまった。
続いて入ろうとして、脱いだ靴に体が止まった。そして何を思ったのか、羚は靴を持って中に入った。その時はそれが必要だと思ったのだ。
社の中に足を踏み入れた瞬間、澄んだ鈴の音が響いた。突然のことに、目を瞠っていると足元に幾何学模様の陣が浮かぶ。淡く輝き、刹那世界が歪んだ。
気付いた時には景色は一変していた。
こうして、話しは冒頭に戻る。
2013.3.6