「ダンテ」
「ん、どうした?」
「お願いだから、腰に腕を回すのはやめてくれる?」



――ヤる気満々に見えるから。



アスベルの胸中は届いたかどうかはわからなかったが、ダンテはアスベルの腰から腕を離そうとはしなかった。

「お勤めの手伝いををしてくれたら離してやるぜ?」

にんまりと殊勝な笑みを浮かべながら言った台詞を聞き、アスベルは肩を落とす。
毎度のことながら、この男は人の話を聞いてはくれない。
一応、耳には入っているのだが、普通のお願いはまるで聞かない。
所謂、おねだりならば聞いてはくれるのだが…。

「嫌よ、貴方の相手は身体が幾らあっても足りないわ…」
「褒め言葉、と取っていいんだな?」
「…勝手にして」

アスベルが言った勝手にしろ、の言葉を別の意味と捉えたダンテは、アスベルの身体を抱き上げ、自室に滑り込んだ。



話を聞かない男1

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