「毒によるショック状態ですね」
「毒?」

医者の口から物騒な物の名称が出てきて、顔をしかめる。

「雀蜂の毒の成分が検出されましたよ。暫くは安静にしておけば良くなる筈です」
「そうかい」

数日間身体を動かさないようにすれば、痛みも無くなると聞き、レイヴンは安心したが、次の医者の言葉を聞き、訝しげに医者を見る。

「…一つ気になる事がありましてね」
「何か問題でもあるのか?」
「彼女が雀蜂に刺されたのは初めてですか?」
「俺の知る限りでは初めてだと思うが…それがどうかしたのか?」
「雀蜂に刺された時のショック状態は人によって様々なのですが、初めて刺された方で意識を失うのはかなりまずいのですよ」
「つまり?」
「大抵の病原菌や、人体に悪い影響を及ぼすものは、発症すれば病原菌などに対して抗体が出来るのはご存知ですか?」

そう言えば、インフルエンザ等の予防接種はそれに対しての抗体を作るために病原菌を打つと聞いたことがあった。
恐らく、それと同じことを言っているのだろう。

レイヴンは医者の言葉に頷き、続きを促した。

「雀蜂の毒に対しても、抗体が作られるのですが、抗体を持った上でもう一度…つまり、二度目以降刺されると、雀蜂の毒に対して、アレルギー反応が起きてしまうのです」
「その、アレルギー反応が問題なのね?」
「雀蜂の毒はまむしなんかと比べ物にならないくらい強いのですよ」


人体を構成しているあらゆる細胞を一瞬のうちに“消滅”させる効果があるらしい。
それほどの強力な毒に対するアレルギー反応の強さは想像に難くない。

医者曰く、初めて刺された時に意識が朦朧とした人は、二度目以降刺されたときは最悪、死に至るらしい。

「次はないと思ってください、特に今の時期は雀蜂の繁殖期ですから」

医者はそう締め括ると、処方箋を出し、薬局へ行くように促した。



Ich drohe Leben

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