「次はない、か…」
たった一匹の蜂に生命を脅かされる生活をしなくてはならないのかと思うと、気が滅入ってしまう。
ベッドに寝かせたアルエを見ながら、そんな事を考えていた。
アルエが雀蜂に刺されてから三日が経ったが、意識を取り戻し、幾らか身体の自由が聞き始めたらしく、ベッドから身体を起こす事が出来るところまで回復出来ていた。
「大分良くなって来たんじゃない?」
「そうですね、まだ気持ち悪いですけど、前程じゃないです」
三日ぶりにアルエの笑顔を見ることが出来、レイヴン自身も安心していた。
「今日は少し冷えるわねー、毛布出した方が良いかね?」
窓から吹き付ける夜風を浴び、腕を擦りながらレイヴンが言う。
「そうですね…ちょっと寒いです」
「じゃあ、出してくるわ」
押し入れから畳んだ毛布を一枚取り出すと、アルエの上へと掛けてやる。
「おっさん、風呂入ってくるから先に寝てな」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
くしゃくしゃと頭を撫で、寝るように促したレイヴンはアルエが寝付くまで見下ろし、それから部屋を出ていった。
Besserung