…が。
「…プロレスでもするんですか?…私非力だから楽しくないですよ?」
――駄目だこの子本気で解ってない。
ぐらぐらとする頭を必死で支え、この何とも言えない微妙な空気をどうしてやろうかとユーリは頭を悩ませる。
(実力行使にでるしかねぇ、か)
叩かれるのを覚悟でアルエの服に手を掛け、左右に引きちぎる…前に、扉をノックする音も無しに扉が開かれる。
「ちょっと、青年何昼からおっ始めようとしてんの」
――しかもおっさんのアルエちゃんで。
「見てわかんねぇのか?」
とんだ邪魔者が入ったものだと、闖入者を睨みながらユーリが言う。
「見て分かるからこそ訊いてんのよ、正気かってねぇ」
「レイヴンさん」
「大丈夫アルエちゃん、何もされなかった?」
余りにも自然にユーリからアルエを引き剥がすと、アルエの着衣の乱れを正してやる。
「何もないですよ?話をしていただけですから」
――ただ話をしていただけなのに何で押し倒されていたのかよくわからんけどね…。
屈託のない笑みを浮かべて言ったアルエを見ながら、心の中で苦笑する。
取り合いっこ2