- ナノ -


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 黄金に光る太陽にも負けないくらいの元気で彼女は笑う。なにも、愉快に思っているわけではない。竜乗りが怖すぎるのだ。不安定な足元。竜の羽ばたきに合わせて揺れる体。吹きつける上空の風。どれをとっても彼女には初めての経験で──笑うしかなかった。
 竜は飛びながらすっかり呆気にとられている。普段、大声で鳴き交わしている鳥たちも今日は形無しで、遠巻きに彼女と竜を見るだけだった。


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