- ナノ -
621
家の前にどっしりと構え、近づく者に睨みを利かせるのは留守を預かる闘竜である。一分の隙もない面構えに逞しい体つき。恐ろしげな雰囲気が通りまで漂ってくるようだ。だが、竜は知っている。家に住む人間たちが帰ってくると、たちまち闘竜の表情はやわらいで、花が咲くように笑顔になるのだ。
闘竜の尻尾の先が僅かに動いたのを、竜は空から見た。もうすぐ人間たちが戻ってくるのかもしれない。
[
←
〇
→
]