- ナノ -


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 で、どうしてこんなことになったのかな。ため息をつきつつ、兄が竜の背中の上でぼやく。彼の前には妹が乗っている。空に、広がる大地、そこを渡る生き物、竜……それら全てへの憧れを、これでもかと瞳に宿して。
 飛び初めも手練れとなら安心だからな、と竜。まったく、世話が焼けるよ。兄はやれやれという顔をしつつ、手綱を持つ妹の手に優しく手を重ねた。


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