- ナノ -


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 海岸に打ち捨てられた船は、古び、朽ち果てながらも、在りし日の夢を見るかのように静かに佇んでいた。この船が動いていたときのこと、ドラゴンさんは知ってる? と人間が尋ねた。竜は頷き、言った。人々がこの船を造っていた頃から知っている。みんな希望に満ちた表情をしていた、と。
 波がさらさらと、船の底を洗っていく。


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