- ナノ -


595

 仔竜に人の言葉はわからない。それでも毎日、人の子は仔竜に話しかけた。そのうち仔竜は、意味までははっきりしないものの、何度も繰り返される音のまとまりを幾つか聞き取れるようになっていた。
 人の子の視線。動き。表情。前後に発せられる音。仔竜は一生懸命に見て、聞いて、考えた。そして少しずつ、理解することのできる言葉を増やしていったのである。


[