- ナノ -


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 ドラゴンさんにふるさとってあるの? と人間が尋ねる。育った街のことなら覚えてはいるが、その街が今もあるかはわからない、と竜。そっかあ、寂しいね。人間が少し俯く。竜はしかし、こう言った。たとえ形を変えていても、その場所はわたしのことを覚えてくれている。そんな気がするのだ、と。
 きっとそうだね。人間は微笑み、頷いた。


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