- ナノ -
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夜闇の満ちる竜舎へ、月影のようにするりと入り込んだ者がいる。また叱られるぞ、と竜はやや呆れたように言う。いいよ、私はここがいちばん落ち着くんだもん、と影の正体……少女が笑った。
丸くなり休む竜に包まれるような位置に陣取って、少女は目を瞑る。その幸せそうな顔。竜は小さなため息をつくと、尻尾の先で彼女の背を優しく撫でた。
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