- ナノ -


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 不憫だな、と緑色の鱗を持つ龍が竜に言った。人と共に育ち、長い時を過ごしたが故に、つい人間に肩入れしてしまうのだろう。
 竜は表情を変えずに、それを不幸とは思わない、と返した。緑の龍は一層、憐れむように竜を見て、西の彼方に去った。


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