- ナノ -


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 彼は夜空を指して言った。あのいちばん光ってる星を竜の星、っていってね、この時期によく見えるんだ。昔々にこの町の近くで暮らしてた優しい竜が、大好きだった星なんだって。
 瞬く白い星は、空が懐に抱く宝物のようだった。その優しい竜はどこへ、と竜は言った。星を追って旅立ったんだ、と彼は微笑んだ。


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